小窓
日本神話の小窓集

作成日:2022/3/4

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天浮橋(あめのうきはし)

天浮橋(あめのうきはし)は、日本神話において「天空に浮かぶ橋」。 天上界から地上界に降りてくる途中にあるが、天上界と地上界をつなぐものではなく、 古事記と日本書紀の両方で言及されている。
天上界と地上界をつなぐものは「柱(みはしら)」である。「天御柱(あまのみはしら)」として登場する。 丹後国風土記によると、京都の西側に天浮橋の残骸があると言われている。 サルタヒコは天浮橋の守護者である。

日本神話で天浮橋(あめのうきはし)が登場する箇所。

天之常立神(あめのとこたちのかみ)

天之常立神(あめのとこたちのかみ)
別天津神 第5代

天之常立神は、日本神話に登場する神。

天地開闢の際、 別天津神五柱の最後に現れた神である。
独神であり、 現れてすぐに身を隠した。
『日本書紀』本文には現れず、 『古事記』および『日本書紀』の一書にのみ登場する。
神代紀第一段第六の一書では天常立尊と表記され、 可美葦牙彦舅尊(うましあしかびひこぢ)・国常立尊(くにのとこたちのかみ)に先立って最初に登場する。

先代旧事本紀』によれば、天之御中主神と同一神である。

出雲大社に客座神として祀られているほか、 駒形神社(岩手県奥州市)、 金持神社(鳥取県日野郡日野町)などに祀られている。

天沼矛(あめのぬぼこ)

天沼矛(あめのぬぼこ)は日本神話に登場する矛である。『古事記』では天沼矛、『日本書紀』では天之瓊矛(本文)・天瓊戈(一書第一・第二・第三)と表記される。

『古事記』によれば、伊邪那岐(イザナギ)・伊邪那美(イザナミ)の二柱の神は、別天津神たちに漂っていた大地を完成させることを命じられ、天沼矛を与えられた。 伊邪那岐・伊邪那美は、天浮橋(あめのうきはし)に立って、天沼矛で、渾沌とした大地をかき混ぜたところ、矛から滴り落ちたものが、積もって淤能碁呂島(おのごろじま)となった。 伊邪那岐・伊邪那美は淤能碁呂島で結婚し、大八島と神々を生んだ(国産み、神産み)。

「瓊は玉のことである」と日本書紀本文に注釈があり、「天之瓊矛」は玉で飾られた矛ということになる。

また、松村武雄とウィリアム・ジョージ・アストンによると、天沼矛が天の御柱となったとする。

天之御中主神(あまのみなかぬしのかみ)

天之御中主神
のみなかぬしのかみ
のみなかぬしのかみ
先代 なし
次代 高御産巣日神
神祇 天津神
別名 天御中主尊
神階 なし
神格 一説に最高神、始源神、究極神
なし
なし
神社 彌久賀神社(みくがじんじゃ)
 
天之御中主神(あまのみなかぬしのかみ)は日本神話の天地開闢において登場する神である。別天津神 初代、造化三神。 神名は天の真中を領する神を意味する。 【「天」の読みは「古事記」の訓注では「あま」と読み、以降これに倣う】とある。

『古事記』では神々の中で最初に登場する神であり、 別天津神にして造化三神の一柱。 『日本書紀』の本文には記述がなく、 第一段の第四の一書に天御中主尊(あめのみなかぬしのみこと)として記述されている。

『古事記』『日本書紀』共にその事績は何も記されていない。 そのため天之御中主神は中国の思想の影響により創出された観念的な神であるとされるが、 これに否定的な論もある。

この神が一般の信仰の対象になったのは、 近世において天の中央の神ということから北極星の神格化である妙見菩薩と習合されるようになってからと考えられている。

天之御中主神は哲学的な神道思想において重要な地位を与えられることがあり、 中世の伊勢神道では豊受大神を天之御中主神と同一視し、 これを始源神と位置づけている。
江戸時代の平田篤胤の復古神道では天之御中主神は最高位の究極神とされている。

ウヒヂニ・スヒヂニ

ウヒヂニ・スヒヂニは『記紀』等に現れる男女一対の神である。 それまでは独神であったが、この代ではじめて男女一対の神となった。
『古事記』は兄を宇比地邇神(うひじにのかみ)、妹を須比智邇神(すひじにのかみ)。 『日本書紀』は兄を埿土煮尊(ういじにのみこと)、妹を沙土煮尊(すいじにのみこと)。 『先代旧事本紀』は兄を泥土煮尊、妹を沙土煮尊と表記する。
神名の「ウ」は泥(古語で「うき」)、 「ス」は沙(砂)の意味で、 大地が泥や沙によってやや形を表した様子を表現したものとする説がある。 宇比地邇神「宇比地」は「初泥」(ういひぢ)の音約、 「邇」は親愛を表す接尾語と解し、 名義は「最初の泥土」と考えられる。 須比智邇神の「須」は「砂」、「比智」は「泥土」、「邇」は親愛を表す接尾語と解し、 名義は「砂と泥土」と考えられる。
【ウヒヂニ】【スヒヂニ】
先代:豊雲野神豊雲野神
次代:角杙神活杙神
神祇天津神天津神
全名:角杙神活杙神
別名:埿土煑尊、埿土煮尊、埿土根尊、泥土根尊沙土煑尊、沙土煮尊、沙土根尊、砂土煮尊
神社:熊野速玉大社、物部神社 等二荒山神社、物部神社 等

大事忍男神(おおごとおしおのかみ)

大事忍男神(おおごとおしおのかみ/おほごとおしをのかみ)は、日本神話に登場する神である。
古事記で、イザナギとイザナミが国産みを終えて神産みの最初に産んだ神である。

古事記伝』は、大事忍男神は熊野本宮大社に祭られる事解之男神のことであり、本来は黄泉から帰還したイザナギの禊祓(みそぎはらえ)に現れるべき神を誤って神産みの最初に入れてしまったのであろうと解釈している。

オオトノヂ・オオトノベ

オオトノヂ・オオトノベは、日本神話に登場する神である。 『古事記』では兄を意富斗能地神(おおとのぢのかみ)、妹を大斗乃弁神(おおとのべのかみ)、『日本書紀』では兄を大戸之道尊、妹を大戸之部尊、『先代旧事本紀』では兄を大苫彦尊(おおとまひこのみこと)、妹を大苫姫尊(おおとまひめのみこと)と表記する。 『古事記』において神世七代の第5代の神々とされ、兄意富斗能地神が男神、妹大斗乃弁神が女神である。 神名は大地が完全に凝固した時を神格化したとする説があり、「地」は男性、「弁」は女性の意味である。 また、「ト」は「ミトのマグワイ」の「ト」で、性器の象徴であるとする説もある。 意富斗能地神の「意富」は「大」で美称、「斗」は「門・戸」で集落の狭い通路、「能」は格助詞、「地」は「父親」で男性の親称と解し、名義は「偉大な門口にいる父親」と考えられる。 また大戸乃弁神の「大戸乃」までは意富斗能地神と同じで、「弁」は「女」(め)の転と解し、名義は「偉大な門口の女」と考えられる。 上記の神名から集落の狭い通路には防壁の守護神がいるとされ、それを祀ってきたと考えられる。
【オオトノヂ】【オオトノベ】
先代:角杙神活杙神
次代:淤母陀琉神阿夜訶志古泥神
神祇天津神天津神
全名:意富斗能地神大斗乃弁神
別名:大戸之道尊、大戸摩彦尊、大富道尊、大苫彦尊大戸之部尊、大戸摩姫尊、大富辺尊、大苫辺尊、意富斗乃辺神
神社:熊野速玉大社、二荒山神社 等二荒山神社 等

大八洲(おおやしま)

大八州 / 大八洲 / 大八島(おおやしま、おほやしま)とは、神話に基づく日本の美称。

伊弉諾(いざなぎ)・伊弉冉尊(いざなみのみこと)の二神の国生みによって生じた八つの島をいうが、 本来、 「おお(大)」は美称、「や(八)」は多数の意で、「多くの島」を意味する。

『日本書紀』は、 をあげるが、 異伝もある。

たとえば『古事記』は越洲以下を欠き、 加えて淡路、対馬(つしま)、壱岐(いき)の8島としている。

オノゴロ島

オノゴロ島 / 淤能碁呂島 / 磤馭慮島 / 自凝島

オノゴロ島、又はオノコロ島とは、日本神話や『記紀』に登場する島。
特にイザナギ・イザナミによる国生み神話で知られ、 神々がつくり出した最初の島となっている。
『古事記』では淤能碁呂島(おのごろじま)、 『日本書紀』では磤馭慮島(おのころじま)と表記する。

オノゴロ島は、自凝島とも表記され、「自(おの)ずから凝り固まってできた島」の意味である。

オモダル・アヤカシコネ

オモダル・アヤカシコネは、日本神話に登場する神。 『古事記』では兄を淤母陀琉神、妹を阿夜訶志古泥神、『日本書紀』では兄を面足尊、妹を綾惶根尊(あやかしきねのみこと)と表記する。 オモダルは「完成した(=不足したところのない)」の意、アヤカシコネはそれを「あやにかしこし」と美称したもの。 つまり、人体の完備を神格化した神である。 また淤母陀琉神は「淤母」は「面」、「陀琉」は「足る」と解して、名義を「男子の顔つきが満ち足りていること」とし、文脈や阿夜訶志古泥神との対応、また今日に残る性器崇拝から男根の様相に対する讚美からの命名と考えられる。 阿夜訶志古泥神は「阿夜」は感動詞、「訶志古」は「畏し」の語幹、「泥」は人につける親称と解し、名義は「まあ、畏れ多い女子よ」とし、淤母陀琉神と同様の理由で、女陰のあらたかな霊能に対して恐懼することの表象と考えられる。 中世には、神仏習合により、神世七代の六代目であることから、仏教における、欲界の六欲天の最高位である第六天魔王の垂迹であるとされ、特に修験道で信奉された。
【オモダル】【アヤカシコネ】
先代:意富斗能地神 大斗乃弁神
次代:伊邪那岐神伊邪那美神
神祇天津神天津神
全名:淤母陀琉神阿夜訶志古泥神
別名:面足尊、面足彦、面垂見尊惶根尊、吾屋惶城根尊、吾屋橿城尊、吾忌橿城神、
綾惶根尊、蚊雁姫尊、青橿城根尊
神社:熊野速玉大社、穏田神社 等健男霜凝日子神社、穏田神社 等

家宅六神(かたくろくしん)

家宅六神(かたくろくしん)は、神道における家宅を表す(または守る)六柱の神の総称である。 家宅六神は、建物の材料や構造を示したものである。 六柱とも、『古事記』において国産みを終えた後、神産みの最初に大事忍男神が産まれた後にイザナギとイザナミの子として産まれている。

神産巣日神(かみむすひのかみ)

神産巣日神
かみむすひのかみ
先代 高御産巣日神
次代 宇摩志阿斯訶備比古遅神
神祇 天津神
別名 神皇産霊尊
神魂命
神階 なし
神格 生成・創造神
なし
蚶貝比売、蛤貝比売
少名毘古那神、天御食持命
天神玉命、角凝魂命
生産日神

神産巣日神(かみむすびのかみ、かみむすひのかみ、かむむすびのかみ)
別天津神 第3代。造化三神。

『古事記』では神産巣日神。 『日本書紀』では神皇産霊尊。 『出雲国風土記』では神魂命と書かれる。 少名毘古那神(すくなびこな)は神産巣日神の子である。 「産霊」は生産・生成を意味する言葉で、高皇産霊神とともに「創造」を神格化した神である。 『古事記』で語られる神産巣日神は高天原に座して出雲系の神々を援助する祖神的存在であり、 他の神々からは「御祖(みおや)」と呼ばれている。 須佐之男命が大気都比売神を殺したとき、 その死体から五穀が生まれ、 神産巣日神がそれを回収したとされる。

『日本書紀』では出雲系の神々が語られないため、 カミムスビはタカミムスビの対偶神として存在するのみで特にエピソードは無い。 『出雲国風土記』では島根半島の地名起源譚に登場する、 土地神たちの御祖として「神魂命」の名が現れる。 キサガイヒメ・ウムギヒメなど土地神たちの多くは女性神であり、 母系社会の系譜上の母神として存在したと考えられる。

特に配偶神(夫神)については記されていないが、複数の御子神がいるとされる。

国狭槌尊(くにさつちのみこと)

国狭槌尊(くにさつちのみこと/くにさづちのみこと)

先代 国常立尊
次代豊斟渟尊
神祇天津神
全名国狭槌尊
別名 国之狭土神
国狭立尊
神社 熊野速玉大社
物部神社等

国狭槌尊は、日本神話に登場する神。

主に『日本書紀』の天地開闢の段に登場する神で別名国狭立尊(くにのさたちのみこと)。
神世七代のうちの一柱である。 『古事記』には大山津見神の子に天之狭土神・国之狭土神がいるが、 国狭槌尊と同一神とは限らない。
神名「サツチ」の「サ」は神稲、「ツチ」は土、即ち神稲を植える土の意か。

『日本書紀』本文では、 天地開闢の後国常立尊、 国狭槌尊が登場し、 次に豊斟渟尊化生したとしており、 これらの三柱の神は男神であると記している。

第一、第二と第四の一書では、国常立尊の次に国狭槌尊が登場し、 他の一書には同一神とみられる神名は登場しない。
『日本書紀』にこれ以降、国狭槌尊が神話に登場することはない。

ツノグイ・イクグイ

角杙神・活杙神(つのぐいのかみ/つぬぐいのかみ・いくぐいのかみ)は、日本神話に登場する男女一対の神である。
『古事記』では兄を角杙神、妹を活杙神、『先代旧事本紀』では兄を角樴尊、妹を活樴尊と表記する。 『古事記』において神世七代の第4代の神とされ、兄角杙神が男神、妹活杙神が女神である。
『日本書紀』では神世七代に数えられていない。

「クイ(クヒ)」は「芽ぐむ」などの「クム」で、「角ぐむ」は角のように芽が出はじめる意、「活ぐむ」は生育しはじめるの意とする説があり、泥土が段々固まってきたことにより、生物が発成し育つことができるようになったことを示す神名であるされる。 また名義は「角状の棒杙」と「活きいきとした棒杙」と考えられる。

【ツノグイ】【イクグイ】
先代:宇比地邇神須比智邇神
次代:意富斗能地神大斗乃弁神
神祇天津神天津神
全名:角杙神活杙神
別名:角樴尊活樴尊
神社:物部神社、宮浦宮 等物部神社、宮浦宮 等

豊雲野神(とよくもののかみ)

豊雲野神
とよくもののかみ
先代 国之常立神
次代 宇比地邇神・須比智邇神
神祇 天津神
別名 豊斟渟尊、豊国主尊
豊組野尊、豊香節野尊
浮経野豊買尊、豊国野尊
豊齧野尊、葉木国野尊
国見野尊、見野尊
神社 熊野速玉大社、物部神社等
《記》豊雲野神(とよくもののかみ)。
《紀》豊斟渟尊(とよくむぬのみこと)。神世七代 第2代。

『古事記』において神世七代の第2代の神とされ、 『日本書紀』では天地開闢に登場する神世七代の第3代の神とされる。 また神世七代の最後の独神である。 「豊かな(=トヨ)雲(=クモ、ノ)」の意であり、雲を神格化した存在とされる。 『古事記』原文にはアクセントの注記があり、「雲」は音を上げて発音するため、神名は「豊雲、野」ではない。 従って名義は「豊かな野で、雲の覆う野」と考えられる。
『古事記』では、神世七代の二番目、国之常立神の次に化生したとしている。 国之常立神と同じく独神であり、すぐに身を隠したとある。

『日本書紀』本文では、 天地開闢の後、 国常立尊、 国狭槌尊の次の三番目に豊斟渟尊が化生したとしており、 これらの三柱の神は男神であると記している。 「豊」がつく名前が多く、 豊雲野神・豊斟渟尊と同一神格と考えられている。 第二から第六の一書には、同一神とみられる神名は登場しない。

『古事記』・『日本書紀』とも、これ以降、豊雲野神が神話に登場することはない。

独神(ひとりがみ)

独神(ひとりがみ)とは、 日本神話において夫婦の組としてでなく単独で成った神のこと。
これに対して、 男女一対の神を「双神」(ならびかみ)ということもある。
類似のものに、 「倶(とも)に生(なりい)づる神」と「偶(たぐ)ひ生(な)る神」の区別がある。

独神の一覧
別天神
  • アメノミナカヌシ(天之御中主)
  • タカミムスビ(高御産巣日)
  • カミムスビ(神産巣日)
  • ウマシアシカビヒコヂ(宇摩志阿斯訶備比古遅)
  • アメノトコタチ(天之常立)
神世七代の独神
  • クニノトコタチ(国之常立)
  • トヨクモノ(豊雲野)

まつろわぬ神

まつろわぬ神 / 順わぬ神 / 服わぬ神 / 奉ろわぬ神とは、 記紀神話などにおける神々の争いや平定事業において、帰順せず抵抗した対抗勢力の神。
祀る神に対して「まつろわぬ神」とされた。
天津甕星(あまつみかぼし)神などがこのように呼ばれることが多い。

ヤマト王権にとって、最大にして最強の勢力が出雲であったことが、『記紀』に占める割合の大きさからも推測することができる。