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氷河時代(ひょうがじだい) 英語:ice age
作成日:2019/7/31
概要
氷河時代 (ice age)とは、
地球 の気候が寒冷化し、
地表と大気の温度が長期にわたって低下する期間で、
極地の大陸
氷床 や高山域の氷河群が存在し、
または拡大する時代である。
氷河学 では、
北半球と南半球の両方において広大な
氷床 が存在することを示す。
氷河時代と呼ばれる期間のうち、
個々の寒冷な気候の期間は「
氷期 」と呼ばれ、
「氷期」と「氷期」の間の断続的な温暖期は「
間氷期 」と呼ばれる。
なお、
「
氷河期 」の言葉が使用されることがあるが、
現在ではこれは「
氷河時代 」と同じ意味ではなく、
「
氷期 」と同じ意味で用いられている。
氷河学 の専門用語では、
「氷河時代」 (ice age) は北半球と南半球の両方において広大な
氷床 が存在することを意味する。
この定義によれば、
我々は氷河時代の間氷期「
完新世 」の只中にいることになる。
最後の氷河時代(第四紀氷河時代)は
更新世 が開始した約260万年前に始まり、
現在も、その(第四紀氷河時代の)真っ只中に居る。
それは今もグリーンランド、北極、そして
南極大陸 に
氷床 が存在していることからいえる。
第四紀氷河時代の最後の氷期は
更新世 の約11万年前に始まり、約15,000 年前に終わった。
この氷期の間に発生した氷河は北半球の多くの地域を覆い尽くした。
雪氷学/氷河学
雪氷学 (せっぴょうがく。glaciology)あるいは
氷河学 は、
氷およびその降水・堆積形態である雪を対象とする学問である。
いくつもの学問分野と直接、
間接に関連する総合科学であり、
地球 科学・災害科学・物質科学・工学などとの接点がある。
訳語「雪氷学」について
日本雪氷学会(*1) には、
極地雪氷、凍土、雪氷物性、衛星観測、雪氷工学、雪氷化学、気象水文、吹雪の分科会・研究会が登録されている。
よく「氷雪学」と間違えて呼ばれるが、
雪氷学者の間では、
「氷雪」は文学的表現として区別されている。
"glaciology"は本来「氷河学 」であるが、
訳語は「雪氷学 」とすることが多い。
氷河学が氷河だけを対象とするため日本ではあまり発展しなかった。
雪氷学は氷と雪全体を対象とし日本でも発展が見られたため、
訳語としては「雪氷学」に取って代わられた。
地球 上の氷に限らず、
火星の氷などの宇宙の氷も雪氷学の研究対象となっており、
そうした場合の学問を特に宇宙雪氷学という。
雪氷学は、氷およびその降水・堆積形態である雪を対象とする学問である。
雪氷学の対象となる気象現象を総称して、
雪氷現象 (snow or ice weather phenomena) と呼ぶことがある。
種々の学問分野と直接、間接に関連する総合科学であり、
地球 科学・災害科学・物質科学・工学などとの接点がある。
日本雪氷学会には、極地雪氷、凍土、雪氷物性、衛星観測、雪氷工学、雪氷化学、気象水文、吹雪の分科会・研究会が登録されている。
(*1) 公益社団法人日本雪氷学会(The Japanese Society of Snow and Ice)
「公益社団法人日本雪氷学会」は、
日本の学術研究団体のひとつ。
雪氷及び寒冷に関する調査研究などを行う。
西暦2012年に公益社団法人となる。
事務所所在地:〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター
Tel.03-5937-0356 Fax.03-3368-2822
E-mail:jimu@seppyo.org
スノーボールアース / 全球凍結
スノーボールアース (Snowball Earth)/ 全球凍結(ぜんきゅうとうけつ)とは、
地球 全体が赤道付近も含め完全に
氷床 や海氷に覆われた状態である。
スノーボールアース現象とも呼ばれる。
地球 はその誕生以来何度か氷河時代と呼ばれる寒冷な気候に支配される時代があった。
現在判明しているもっとも古い氷河時代は、
南アフリカで発見された約29億年前の
ポンゴラ氷河時代 で、
最も新しいものは現在も続いている「
新生代 後期氷河時代」である。
最近約一万年の期間は、氷河時代の中にあって、比較的温暖な間氷期とされる。
原生代初期のヒューロニアン氷河時代(約24億5000万年前から約22億年前)の最終期と、
原生代末期のスターチアン氷河時代およびマリノニアン氷河時代(約7億3000万年前~約6億3500万年前)に、
地球 表面全体が凍結するほどの激しい氷河時代が存在したという考え方が
地球 史の研究者の間で主流となりつつある。
これをスノーボールアース仮説といい、
西暦1992年にカリフォルニア工科大学のジョセフ・カーシュヴィンク教授がアイデアとして専門誌に発表したのが発端である。
その後西暦1998年にハーバード大学のポール・ホフマン教授が南アフリカのナミビアでのキャップカーボネイト調査結果などをまとめて科学雑誌サイエンスに投稿し大きな反響を得た。
この仮説において注目すべき点は、
それまで「ありえない」と考えられてきた「全球凍結」という壮絶な環境変動が実際に起こったらしいこと、
それが原因となって原生生物の大量絶滅(大絶滅)とそれに続く
カンブリア爆発 と呼ばれる跳躍的な生物進化をもたらしたとされることであろう。
たとえば酸素呼吸をする生物の誕生や、
エディアカラ生物群 と呼ばれる多細胞生物の出現などがスノーボールアース・イベントと密接に関わっていると考えられている。...
この説が提案されるまでは、
地球 は形成直後のマグマオーシャンに覆われた灼熱の状態から徐々に冷えて、
温暖な気候の時期と、寒冷な気候の時期、
いわゆる氷河時代を経ながら現在に至ったもので、
この間に
地球 全体が赤道に至るまで完全に凍結したことは1度もなかったと考えられてきた。
また
地球 生命が約38-40億年前の誕生以来ずっと継続していることが、
全
地球 完全凍結というカタストロフィックな事態が起こらなかった証拠と考えられてきた。
仮にこのようなことが起こったのであれば、
生命がそれを生き延びたとは考えにくく、
再び温暖になったときに生命も再び誕生したと考えるのが妥当とされていた。
スノーボールアース仮説では、
地球 が完全に凍結したとしても再び温暖な環境を取り戻す過程を提示し、
地球 史上にスノーボールアース状態が存在する可能性を示した。
凍結から脱する要素として火山活動に由来する二酸化炭素などの温室効果ガスの蓄積を挙げている。
現在の
地球 に見られるような液体の海は大気中の二酸化炭素を吸収するため、
大気中の温暖化ガスの濃度はある程度に抑えられ温室効果による温度上昇も抑制される。
しかし、
全球凍結状態では海が凍り付いてしまうことから、
二酸化炭素をほとんど吸収せず、
火山から放出された二酸化炭素は海に吸収されることなく大気中に蓄積していく。
このため、
二酸化炭素の濃度は約2000年間かけて最終的に現在の400倍程度に達したとされる。
その大きな温室効果が大気の温度を最大で 100 ℃ 近く上昇させ、
結果として平均気温は 40 ℃ 程度となって
氷床 が溶けだし、
全球凍結状態を脱出したと考えられている。
また生物についても、
凍結しなかった深海底や火山周辺の地熱地帯のような、
一定の温度が保たれる場所で生きながらえてきたと考えられている。
バクテリアの(遺伝子の変化を含む)環境適応性は非常に高く、
生物学者のダグラス・アーウィンは、
全球凍結した
地球 上に、
1つがディナー皿程度の大きさの「オアシス」(ここでは火山などによる氷結しない温暖地を指す)が 1000 か所ほどあり、
それぞれに 1000 ほどの単細胞個体がいれば、
それまでの全ての生命種は十分に維持される、と主張している。
又それ以外に現在も恐らくは当時も
地球 には「地下生物圏」(deep biosphere)があり、
そこに住まう生命が地表付近・海中・海底付近に再進出した事も考えられる。
既知の氷河時代
ポンゴラ氷河時代(Pongola glaciation)
ポンゴラ氷河時代 は約29億年前(
先カンブリア時代 .太古代 .中太古代 )に発生した。
最初のバールバラ超大陸 が崩壊したのは、
今から約28億年前のこの時代である。
中生代チャートの酸素同位体の分析は、55-85℃前後の海洋温度の推定につながった。
一方で、
風化率に関する他の研究では、
平均気温が 50℃未満であると仮定している。
大気中の二窒素含有量は基本的に今日のものと類似していると考えられており、
二酸化炭素の分圧はおそらく0.7barより低かった。
ヒューロニアン氷河時代(Huronian glaciation)
ヒューロニアン氷河時代 (Huronian glaciation) 24億5000万年前 - 21億年前
古原生代 の24億5千万年前(
シデリアン )から21億年前(
リィアキアン )に起こった氷河時代。
スノーボールアース に近い、きわめて深刻な
氷期 だったと考えられている。
マクガニン氷期(Makganyene glaciation)とも呼ばれる。
ヒューロニアン氷期以前、生物のほとんどは嫌気性(英: anaerobic)であったが、
この時代に光合成を行う
シアノバクテリア に進化し、
無尽蔵の太陽光をエネルギーに酸素を「廃棄物」として大量に発生させた。
この酸素は金属イオンを酸化し、
特に大量の金属鉄を酸化鉄として沈殿させ現在地表で見られる縞状鉄鉱層を形成した。
海中では酸素に対して抵抗性を持たない生物を分解して消費した。
なおも
シアノバクテリア は成長し、海水中の酸素の消費源は飽和したと見られる。
やがて大気中においてもメタンや二酸化炭素を消費して、
それまでは微量成分だった窒素とともに酸素は大気の主要成分になるという環境の大きな変化がおきた。
このことが温室効果の減少による気温の急激な低下を招いて
氷期 に至ったとされる。
この
氷期 は
地球 で最初の
スノーボールアース を仮定するほどの深刻な
氷期 で、
嫌気性生物に加えて、
シアノバクテリア を含む(単細胞生物相の)大量絶滅が起きたと推定されている。
クライオジェニアン氷河時代(Cryogenian glaciation)
クライオジェニアン氷河時代 (Cryogenian glaciation) 7億2千万年前 - 6億3500万年前
7億2千万年前の
新原生代 .
クライオジェニアン から、
その次の紀である
新原生代 .
エディアカラ紀 が始まるまでの8,500万年間続いた氷河時代で、
スターティアン氷期 と
マリノニアン氷期 (以前はヴァランガー氷期として一つに考えられていた)を含む。
クライオジェニアンとは、
ギリシャ 語で「氷」を意味するcryosと「誕生」を意味するgenesisからなる。
クリオジェニアンと訳される場合もある。
この時代、
周期的に幾度か赤道まで氷河が伸長していたことが示される。
これらの氷河の痕跡を示す漂礫岩堆積物が世界中で見られる。
一般的に少なくとも二つの全世界的氷河期に分けられると考えられ、
スターティアン氷期 は7億5000万~7億年前まで続き、
マリノニアン氷期 はおよそ6億3500万年前に終了した。
漂礫岩堆積物はクライオジェニアンに低緯度だった地域にも発生していたことから、
海洋が深くまで凍りついた「
スノーボールアース 」と呼ばれる現象が起きたと考えられている。
アクリタークの数は氷河期によって激減し、
大気中の酸素は増加したといわれる。
非常に低緯度の地域にも氷河があったこと、
暖かい水域の堆積物であるはずの石灰岩が氷河堆積物の上下や混在していたりするなど、
この氷河期にはいくつかの謎がある。
氷河期に伴う、
古原生代から見られなかった縞状鉄の再発生は酸素濃度が低く、
変動していることを示す。
古地磁気研究によれば大陸移動の率は非常に大きい。
基本的に大陸地殻の著しい不均衡は自転軸の方向はそのままに
地球 を大陸塊が赤道上に来るまで横転させる。
これが見かけ上平均より非常に速い大陸移動を引き起こす。
他の全世界的氷河期には24億~21億年前の
ヒューロニアン氷河時代 、
4億5000~4億2000万年前オルドビス紀のAndean-Saharan氷期、
3億6000万~2億6000万年前石炭紀・ペルム紀のKaroo氷期、
3000万年前に南極で始まり進行中の
新生代 .第四紀の氷河期がある。
スターティアン氷期
スターティアン氷期 は、
地球 が大規模な氷河・
氷床 の発達を再度経験したクライオジェニアン紀における、
単一あるいは複数の氷期。
スターティアン氷期の期間の定義は様々であり、
年代は約7億1700万年前から約6億4300万年前に亘る。
Stern et al. は7億1500万年前から6億8000万年前に位置付けている。
Eyles and Youngによると、
オーストラリア南東部とカナダ北部の新原生代層序には氷河性岩石が顕著に分布しており、
スターティアン氷期の堆積物は不整合面を挟んでBurra層群の岩石の上に位置する。
スターティアン氷期の層序には氷河
氷床 の成長と後退を示す2つの主要なダイアミクタイト-泥岩シーケンスが見られる。
これは層序的には
北アメリカ のRaptian累層と対応する。
ノルウェー北部のルイシュのモレーンはこの時代に堆積した可能性がある。
西暦2010年にはカナダの氷河堆積物に挟まれた火山岩層がウラン・鉛年代測定法により約7億1650万年前のものであると推定されている。
古地磁気学的研究から当時のカナダは赤道付近に位置していたことが示唆されており、
地球 全域が氷河
氷床 に覆われたスノーボールアースの状況にあったことが推測されている。
スターティアン氷期とその次の氷期であるマリノアン氷期の間では、
藻類に典型的なステロイドのバイオマーカーの卓越から、
藻類が海洋で繁栄を遂げたと推測されている。
スターティアン氷期で海水準が低下し、
海面上に露出した陸地は風化作用を受け、
海水にリンが流出することになった。
必須栄養素を受容した
真核生物 の藻類は貧リン環境に適応した
原核生物 である藍藻との生存競争に勝利し、
食物連鎖の構造を藍藻によるものよりも効率的なものに改変したとされる。
マリノニアン氷期
マリノアン氷期 は、
約6億5000万年前から6億3230 ± 590万年前まで続いた世界規模の氷河時代。
新原生代のクライオジェニアン紀に発生した。
氷河はおそらく全球を被覆し、
スノーボールアースと呼称される事象が発生した。
氷河時代の終わりは赤道付近の永久凍土から放出されたメタンにより加速した可能性がある。
名称は南オーストラリア州のAkelaide Geosyncline (Adelaide Rift Complex) の層序用語から派生しており、
アデレード郊外に位置するMarianoにちなむ。
マリノアン統という用語は西暦1950年にダグラス・モーソンと
レッグ・スプリッグ の論文で命名され、
アデレード地域の新原生代の岩石とBrighton石灰岩の最上部からカンブリア系基底までの全ての地層を包含するものとして扱われた。
対応する地質時代であるマリノアン世は現在の用語における中部クライオジェニアンから最上部エディアカランに割り当てられる。
モーソンはマリノアン世の氷河時代を認識し、
地質学的証拠を発見したElatina Tillite(現在のElatina累層)にちなんでElatina氷期とした。
しかし、先に発生したスターティアン氷期がスターティアン世の氷河時代であったことから、
マリノアン世に起きたElatina氷期よりもマリノアン氷期という語が一般的に用いられるようになった。
マリノアン氷期という語は、
モーソンが南オーストラリア州で発見したElatina氷期に直接・間接を問わず対応する全ての氷河時代に対し、
世界的に用いられるようになった。
なお、世界的な相関関係の不確かさと、
エディアカラ紀の氷河時代(ガスキエス氷期)も広範なマリノアン世に含まれることから、
南オーストラリア州ではElatina氷期という用語に戻す動きが出ている。
アンデス・サハラ氷河時代(Andean-Saharan glaciation)
アンデス・サハラ氷河時代 (Andean-Saharan glaciation) 4億5000万年前 - 4億2000万年前
4億5000万年前から4億2000万年前の
古生代 .後期の
オルドビス紀 と
シルル紀 に発生した。
大規模な氷河の痕跡は、
西アフリカ (サハラのタマジャート層)、
モロッコ (ティンドゥフ盆地)、
サウジアラビアの西中部の
オルドビス紀 後期の地層 (主にアシュギリアン) で記録されている。
アラビア、当時は極緯度のすべての地域。
オルドビス紀 紀後期からシルリア前期にかけて、
氷河の中心は北アフリカから南アメリカ南西部に移動した。
この期間中、氷河はアラビア、サハラ、西アフリカ、アマゾン南部、アンデスで知られている。
氷河の中心は、
サハラ(
オルドビス紀 )から南アメリカ(
シルル紀 )に移動した。
アフリカとブラジル東部で最大の氷河が発達した 。
小さな氷河期であるアンデス・サハラ氷河期の前には、
スノーボールアース と呼ばれる
クライオジェニアン氷河時代 (スターチアン氷期とマリノア氷期) があり、
その後に
カルー氷河時代 (3億5000万年前 - 2億6000万年前) が続いた。
カルー氷河時代(karoo glaciation)
カルー氷河時代 (karoo glaciation) 3億6000万年前 - 2億6000万年前
デボン紀 の始まりに起きた陸上植物の進化により、
長い期間にわたって
地球 上の酸素濃度が増加し、
CO2濃度が減少した結果とされる。
カルー氷河時代の名は南アフリカのカルー地方で見つかった氷河性漂礫土に因み、
同地方でこの氷河時代の存在を示す証拠が初めてはっきりと同定された。
石炭紀 と
ペルム紀 初期の間の3億6000万年前から2億6000万年前まで、
ある程度の間隔を置きつつも極地の氷冠が南アフリカまで広がっていた。
相互に関係する堆積物は、アルゼンチンから、
また古代の
ゴンドワナ大陸 の中心にあったことがわかっている。
第四氷河時代(Quaternary glaciation)
現在の氷河時代である
第四紀氷河時代 は
更新世 (約258万年前から)に始まり、
北半球の
氷床 が拡大し始めた。
それ以来、
地球 では4万年と10万年の時間スケールで周期的に
氷床 の発達と後退を繰り返してきており、
これらは
氷期 と間氷期、あるいは
氷床 拡大期や
氷床 後退期などと呼ばれる。
地球 は現在、間氷期にあり、最後の
氷期 (
最終氷期 )は約1万年前に終わった。
その大陸
氷床 で現在まで残存しているのは、
グリーンランド
氷床 と南極
氷床 、
およびバフィン島にあるような比較的小規模な
氷床 である。
最終氷期
最終氷期 (さいしゅうひょうき) Last glacial period
最終氷期とは、
およそ7万年前に始まって1万年前に終了した一番新しい氷期のことである。
この時期は氷期の中でも地質学的、地理学的、気候学的にも最も詳しく研究されており、
気温や、大気・海洋の状態、海水準低下により変化した海岸線など緻密な復元が進んでいる。
俗に「氷河期」という言葉を使うときはこの時代を指すことが多い。
地域によってヴュルム氷期、ウィスコンシン氷期と呼び分ける。
最終氷期の時に最も氷床が拡大したおよそ2.1万年前を最終氷期の最寒冷期(最終氷期最盛期、Last Glacial Maximum、LGM)と呼ぶ。
最終氷期の最盛期には、
数十万立方キロメートルといわれる大量の氷が
ヨーロッパ や北米に氷河・氷床として積み重なった。
海水を構成していた水分が蒸発して降雪し陸上の氷となったため、
地球 上の海水量が減少、世界中で海面が約120メートルも低下した。
日本列島およびその周辺では、
海岸線の低下によって北海道と樺太、
ユーラシア大陸は陸続きとなっており、
現在の瀬戸内海や東京湾もほとんどが陸地となっていた。
また、
東シナ海の大部分も陸地となり、
日本海と東シナ海をつなぐ対馬海峡もきわめて浅くなり、
対馬暖流の流入が止まったと言われている。
この影響もあり日本列島は現在より寒冷で、
冬季の降雪量が少なかったと考えられている。
北海道では永久凍土やツンドラ、
標高の高い地域では山岳氷河が発達し、
針葉樹林は西日本まで南下していたと言われている。