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古事記上巻2(天地開闢)

作成日:2019/8/24

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別天神わけあまつかみ
【原文】別天神
天地初發之時 於高天原 成神 名天之御中主神 [訓高下天 云阿麻 下效此] 次高御產巢日神 次神產巢日神 此三柱神者 並獨神成坐而 隱身也 次 國稚如浮脂而久羅下那州多陀用幣流之時流字以上十字以音 如葦牙 因萌騰之物而成神名 宇摩志阿斯訶備比古遲神此神名以音 次天之常立神 訓常云登許 訓立云多知 此二柱神亦 獨神成坐而 隱身也 上件五柱神者 別天神
【読み下し文】別天神

天地初發之時 於高天原 成神 名天之御中主神 [訓高下天 云阿麻 下效此] 次高御產巢日神 次神產巢日神 此三柱神者 並獨神成坐而 隱身也
天地あめつちはじめにこりたる[之]時高天原に[於]神成りまし、 名づけて天之御中主の神 [「高」の下なる天を<み、阿麻あまと云ふ。 下に此れならふ。]、 次に高皇産霊尊の神。 次に神産巣日神の神といふ。
此の三柱の神並びて独神と成りして[而]、 身を隠しましき[也]。

次 國稚如浮脂而久羅下那州多陀用幣流之時 [流字以上十字以音] 如葦牙 因萌騰之物而成神名 宇摩志阿斯訶備比古遲神[此神名以音] 次天之常立神 訓常云登許 訓立云多知 此二柱神亦 獨神成坐而 隱身也 上件五柱神者 別天神
次に、国わかく、浮くあぶらの如くして[]、久羅下那州多陀用幣流くらげなすただよへる[之]時[「流」のもじ以上十字とをもじこゑを以ちてす] 葦牙あしかびの如く萌えがる[之]物に因りて神成りまし、 名づけて宇摩志阿斯訶備比古遅うましあしかびひこぢの神、 [此の神の名、こゑを以ちてす] 次に天之常立あめのとこたちの神といひます。 [「常」を訓み登許とこと云ふ。「立」を訓み多知たちと云ふ] 此の二柱の神もまた国之常立神(くにのとこたちのかみ)成り坐し、 而ちすなは身を隠しませり[也]。 かみくだり五柱いつはしらの神別天津神なり。

【現代語訳】別天神
天地開闢の時、 高天原に神が現れました。名を、天之御中主神 [「高」の下の「天」の読みは、以後「あま」とします]、 次に、高きみむすびの神、次に、かむみむすびの神と申され、 これら三柱の神はそろって独り神であらせられます。そしてそのまま姿を隠されました。
次に、国幼く、浮く脂のように、またくらげのように漂っていたとき、葦の芽のように萌え上がってできた物により神が現れ、名を「うましあしかびひこちの神」、次に「天の常立の神」(「常」は「とこ」、「立」は「たち」と読みます)と申され、これら二柱の神もまた、そろって独神にあらせられます。そしてそのまま姿を隠されました。これまでの五柱の神は、 別天津神といいます。
【解説】別天神

神世七代かみのよななよ
【原文】神世七代
次成神名國之常立神 訓常立亦如上 次豐雲上野神 此二柱神亦 獨神成坐 而隱身也 次成神名宇比地邇上神 次妹須比智邇去神 此二神名以音 次角杙神 次妹活杙神 二柱 次意富斗能地神 次妹大斗乃辨神 此二神名亦以音 次於母陀流神 次妹阿夜上訶志古泥神此二神名皆以音 次伊邪那岐神 次妹伊邪那美神 此二神名亦以音如上 上件 自國之常立神以下伊邪那美神以前 幷稱神世七代 上二柱獨神 各云一代 次雙十神 各合二神云一代也
【読み下し文】神世七代

次成神名國之常立神 [訓常立亦如上] 次豐雲野神 此二柱神亦 獨神成坐 而隱身也
次に神成りまし、 名づけて国常立尊 [「常立」のみ、上の如し] 次に豊雲野神といひ、此の二柱の神はまた国之常立神(くにのとこたちのかみ)成りすなは独神と成り坐(ま)して[而]、身を隠しませり[也]。

次成神名宇比地邇神 次妹須比智邇神 [此二神名以音]: 次に神成りまし、名づけて宇比地迩の神、次にいも須比智迩の神。 此の二神の名こゑを以ゐる。

次角杙神 次妹活杙神 二柱: 次に角杙の神、次に妹、活杙の神。 二柱

次意富斗能地神 次妹大斗乃辨神 此二神名亦以音: 次に意富斗能地の神、次に妹、大斗乃弁の神 此の二神の名。こゑもちゐる

次於母陀流神 次妹阿夜訶志古泥神此二神名皆以音: 次に於母陀流の神、次に妹、阿夜訶志古泥の神 此の二神の名。こゑを以ゐる。

次伊邪那岐神 次妹伊邪那美神 此二神名亦以音如上:次に伊邪那岐の神、次に妹、伊邪那美の神。此の二神の名。上の如くこゑを以ゐる。

上件 自國之常立神以下伊邪那美神以前 幷稱神世七代 上二柱獨神 各云一代 次雙十神 各合二神云一代也
かみつくだり、国之常立神り伊邪那美神の以下いげ以前さきつかたよりあわせ神世七代なづく。
かみ二柱ふたはしら独り神おのおの一代ひとよと云ひ、次のふたあはすとを神は、おのおのふた神を合わせて一代ひとよと云ふ[也]。

【現代語訳】神世七代
次に神が現れ、名を国之常立神くにのとこたちのかみ(「常立」の読みは、上と同じです)、 次に豊雲野神と申され、この二柱の神もまた、独り神にあらせませます。
そしてそのまま姿を隠されました。

次に神が現れ、名を宇比地迩の神、その妻、須比智迩の神。この神の名、こゑで表す。
次に角杙の神、その妻、活杙の神。二柱。
次に意富斗能地の神、その妻、大斗乃弁の神。こゑで表す。
次に於母陀流の神、その妻、阿夜訶志古泥の神こゑで表す。
次に伊邪那岐の神、その妻、伊邪那美の神。この二柱の神の名、同じくこゑで表す。
これまでのくだり、国の常立の神から伊邪那美の神までを、併せて神世七代と言います。
はじめの二柱の独り神はそれぞれ一代と数え、次の二柱ずつ、 計十柱の神は、 それぞれ二神を合わせて一代と数えます。


【解説】神世七代

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