小窓
扶桑略記(ふそうりゃくき)

作成日:2023/6/17

『扶桑略記』(ふそうりゃくき)

平安時代の私撰歴史書。 総合的な日本仏教文化史であるとともに『六国史』の抄本的役割を担って後世の識者に重宝された。

西暦1094年寛治8年)以降の堀河天皇代に比叡山功徳院の僧・皇円が編纂したとされるが、 異説もある。 全30巻よりなり、 このうち巻二から六、 巻二十から三十の計16巻と、巻一および巻七から十四の抄記が現存する。

内容は、神武天皇より堀河天皇西暦1094年寛治8年3月2日)までの国史について、 帝王系図の類を基礎に和漢年代記を書入れ、 さらに『六国史』や『慈覚大師伝』などの僧伝・流記・寺院縁起など仏教関係の記事を中心に、 漢文・編年体で記している。 多くの典籍を引用していることは本書の特徴の一つであるが、 その大半が今日伝存せず、 出典の明らかでない記事も当時の日記・記録によったと思われる。 『八幡宇佐宮御託宣集』・『水鏡』・『愚管抄』など鎌倉時代の歴史書にもしばしば引用され、 後世に与えた史的意義は大きい。

善光寺縁起』に関して初めて記述した書物である。