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象形文字

作成日:2024/4/3

楔形文字

楔形文字(くさびがたもじ、せっけいもじ) 英語:cuneiform

楔形文字とは、 メソポタミアを中心に古代オリエント世界でアケメネス朝ペルシャ時代まで長く使用された古代文字。 その後忘れ去られたが、 19世紀中頃ローリンソンによって解読された。 現在、多数の楔形文字を記した粘土版が発掘され、 解読が進んでいる。

筆記には水で練った粘土板に、 葦を削ったペンが使われた。 最古の出土品は紀元前3400年にまで遡ることができる。 文字としては人類史上最も古いものの一つであり、 古さでは紀元前3200年前後から使われていた古代エジプトのヒエログリフに匹敵すると言われている。

楔形文字(cuneiform)という名称は、 ラテン語の cuneus(くさび)と、 forma(形)からなる造語であり、 西暦1712年のエンゲルベルト・ケンペル『廻国奇観』の中で使われてから、 一般でも使用されるようになったとされている。 オリエント学のうち、 この文字を使用した文明・文化の研究は、 一般に「アッシリア学」と呼ばれる。

楔形文字というのはあくまで文字の形状に注目した名称であり、 実際には起源・系統の異なる多様な文字体系を含む。 文字の種類としても、 代表的なシュメール語・アッカド語の文字は表語文字と音節文字の組み合わせであるが、 ウガリット文字はアブジャドであり、 古代ペルシャ楔形文字はアルファベットである。

象形文字

象形文字(しょうけいもじ)/ ヒエログリフ(hieroglyph)

象形文字とは、 ものの形をかたどって描かれた文字からなる文字体系で、 絵文字からの発展によって生まれたと考えられている。 絵文字と象形文字との最大の違いは、 文字が単語に結びつくか否かにある。 絵文字が文字と語の結びつきを欲せず、 その物を必要としたものであるのに対し、 象形文字は文が語に分析され、 その語と文字とが一対の対応をなす表語文字の一種のことをいう。

象形文字では、 文字はもっぱらそのかたどったものの意味を担うが、 一般に表語文字では、 それぞれの文字が具体的な事物にとどまらず語や形態素を表すことが多い。 しかし、漢字における仮借、 ヒエログリフなどでの表音的使用など必ずしも象形文字の特徴と一致するわけではないものもまとめて象形文字と呼ぶことが多い。

このような意味での象形文字としては、 漢字、ヒエログリフ、楔形文字、インダス文字、トンパ文字などがある。 マヤ文字もこの一種であって頭字体と幾何体がある。 暦の文字には、 1を表す点(・)と5を表す横棒(-)の代わりに頭字体や幾何体を用いることがある。

日本においては、 琉球王国時代の与那国島で使われていた帳簿記録用字であるカイダ文字などがある。

ヒエログリフ

古代エジプトで使われた象形文字は3種類ある。
ヒエログリフ(神聖文字/聖刻文字)
人体、鳥、獣、魚、その他自然界のものを絵として示した。 この文字は3種類の中でも一番古く、 すでに先王朝時代(紀元前3200年前後)に生まれていたが、 書記法が整ったのは第1王朝が始まってからである。
一般には古代エジプトの象形文字あるいはその書体を指すが、 広義にはアナトリア・ヒエログリフ、 クレタ・ヒエログリフ、 マヤ・ヒエログリフ、 ミクマク・ヒエログリフなど、 他の象形文字に対しても用いられることがある。
ヒエラティック(神官文字)
ヒエログリフは筆記に手数がかかり、したがって多くの時間を要するので、 早く書くためのヒエラティックが生まれた。 この新しい文字は、絵を著しく簡略化したものである。 聖刻文字が神殿、ピラミッド、墓、勅令などに一貫して用いられるのに対し、 ヒエラティックは行政上の文書、文学作品、書簡におもに用いられた。 パピルス紙の普及とともにヒエラティックは多用された。
デモティック(民衆文字)
ほぼ完全な草書体である。主としてパピルス文書に用いられた。 ヒエログリフの解読に用いられたロゼッタ石第二段はデモティックで書かれている。
デモティックは古くは紀元前660年に使われているのが見つかっており、 紀元前600年には古代エジプトでは標準的な書体となったと見られている。 4世紀にはエジプトでもギリシャ文字を基にしたコプト文字が使われており、 デモティックはそれ以後使われなくなった。
後年に見つかっているデモティックの最後の使用例は、 紀元452年にフィラエ神殿の壁に刻まれたものである。