小窓
小窓集(火山)

作成日:2024/1/6

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姶良カルデラ(あいらカルデラ)

姶良カルデラ(あいらカルデラ)

姶良カルデラは、 鹿児島湾北部(湾奥)において直径約20kmの窪地を構成しているカルデラである。 南九州のカルデラ群の一つで、 加久藤カルデラと阿多カルデラの間に位置する。

現在のカルデラを形成した姶良火砕噴火は、 約3万年前と推定されている。 桜島火山のマグマ供給源とされる。
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姶良Tn火山灰(あいらティエヌかざんばい)

姶良Tn火山灰(あいらティエヌかざんばい)   Tnは丹沢を示す

姶良Tn火山灰は、 約2万9千年前~2万6千年前に姶良カルデラの巨大噴火で噴出した大量の火山灰である。(以前は約2万5000年前~2万年と考えられていた。)
この大噴火で噴出した火砕流が陸上を流れて堆積したものが入戸火砕流で、 「シラス」の通称でよく知られている。 同時に噴出した火山灰のうち、 空中高く吹き上げられ、 偏西風に乗って東方へ飛んでから地上に降下したものが姶良Tn火山灰 (AT) となった。

当初は丹沢山地に分布していることから丹沢軽石(丹沢パミス)と名付けられ、 その後西暦1970年代に姶良カルデラが起源であることがわかり、 姶良丹沢火山灰と呼ばれるようになった。 広域テフラ研究の先駆けとなり、 テフラ年代学がうまれ、 世界中の地層の年代決定が進み、 考古学に影響を与えた。

姶良Tn火山灰は、 九州から関東地方まで、 直径2000キロにおよぶ卵形の地域に分布する。 地層の年代決定における鍵層の一つになっている。 地質学ではしばしばATの記号で表される。

火山灰に覆われた面積は約4百万km2、 火砕流堆積物を除いた火山灰の全体積は約150km3にもなる。 この地層を境にして植物の種類が大きく変化しており、 寒冷化の原因になったとも考えられている。

阿蘇カルデラ

阿蘇カルデラは、熊本県にある阿蘇山の噴火によりできたカルデラ地形である。 南北25km、東西18kmで、中心部に中央火口丘の阿蘇五岳があって、 カルデラ底を北部の阿蘇谷、南部の南郷谷に分断している。
カルデラ内の阿蘇谷と南郷谷には湖底堆積物がある。 地質調査やボーリング調査によって阿蘇カルデラ形成後にカルデラ内において湖が少なくとも3回出現したと考えられ、 古いものから、古阿蘇湖、久木野湖、阿蘇谷湖と呼ばれている。 また、現在露出している中央火口丘群は活動期間後半の8万年前から現在までに形成された山体に過ぎず、 活動初期の山体は噴出物に埋没している。

阿蘇カルデラは、 27万年前から9万年前に起きたAso-1(約26.6万年前)、 Aso-2(約14.1万年前)、 Aso-3(約13万年前)、 Aso-4(約9万年前)と呼ばれる4つの火砕流の噴出に伴う活動で形成された。 特に大規模だったのはAso-4で多量の火砕物を放出し、 火砕流は当時陸続きだった秋吉台(山口県)まで流走した。 その距離は160kmにもなる。 Aso-4の噴火で、 現在見られる広大な火砕流台地を形成した。 その後の侵食でカルデラ縁は大きく広がり、 現在の大きさにまで広がったと考えられている。 なお、Aso-4火山灰が日本列島を広く覆っていることは西暦1982年に初めて気づかれ西暦1985年に発表された。 またこの4回の火砕流の体積は内輪に見積っても約200 km3である。

阿蘇カルデラの大きさは、 よく世界最大級と言われるがそれは、 阿蘇カルデラのようなじょうご型カルデラで、 カルデラの内側に2.6万の人口をもつ集落を形成し、 広く農地開墾が行われ、 国道や鉄道まで敷設されている例としては世界最大級ということである。

なお陸地における世界最大のカルデラはインドネシアのトバカルデラ(長径約100km、短径約30km)である。 トバカルデラのようなバイアス型カルデラでは、 70 - 80kmになることも珍しくない。 また、日本では、 屈斜路カルデラ(長径約26km、短径約20km)が最大で、 阿蘇はこれに次ぐ第2位である。

阿蘇山

阿蘇山(あそさん、あそざん)  標高1592m

阿蘇山は、 日本の九州中央部、 熊本県阿蘇地方に位置する火山。 カルデラを伴う大型の複成火山であり、活火山である。

阿蘇山という単独の山が存在するのではなく、 高岳、中岳、根子岳、烏帽子岳、杵島岳の総称であり、 この五つを阿蘇五岳と呼び、 カルデラと中央火口丘で構成されている。

最高点は高岳の標高1592m。 カルデラは南北25km、 東西18kmに及び(屈斜路湖に次いで日本では第2位)面積380km2と広大である。

西暦2007年、 日本の地質百選に「阿蘇」として選定された。 西暦2009年平成21年)10月には、 カルデラ内外の地域で、 巨大噴火の歴史と生きた火口を体感できる「阿蘇ジオパーク」として日本ジオパーク、 世界ジオパークに認定されている。 「日本百名山」の一座としても取り上げられている。 また、阿蘇くじゅう国立公園にも含まれる。

阿蘇山の主な噴出年代と噴出量 注)DRE(Dense Rock Equivalent)は換算マグマ噴出量。噴出堆積物の量はこれよりもはるかに多い。

火砕サージ

火砕サージ(pyroclastic surge)

火山の噴火の際に発生する現象のひとつ火砕流の一種で、 火山ガスを主体とする希薄な流れのこと 流動性が高く、 高速で薙ぎ払うように流動する現象。 尾根を乗り越えて流れることがある。 単にサージ(surge)ともいう。

ガス成分が多いため、 火砕流とは異なり乱流であると考えられている。 時には時速100キロメートルを超える高速で移動するが、 固体粒子が少なく乱流であるため粒子が落ちやすく、 サージとしての流動形態はあまり長続きしない。 到達距離は最大で5キロメートル程度と考えられている。

発生前に流れ方を予測することが困難なため、 防災対応上は希薄な火砕流が発生することを前提として、 火山によっては噴火警報等で「火砕流」の中に含めて警戒を呼びかけている。

火砕流

火砕流(pyroclastic flow)/ 火山砕屑流(かざんさいせきりゅう)

火砕流(かさいりゅう)は火山灰や岩塊、 火山ガス等が一体となって急速に流下する現象で、 速度は時速 数十 km から数百 km、 温度は数百℃にも達する。 大規模な場合は地形の起伏にかかわらず広範囲に広がり、 森林や家等を埋没、破壊、焼失させ、破壊力が大きい。

英語では「pyro(火の)clastic(破片の) flow(流れ)」。

カルデラ

カルデラ(caldera)

カルデラは、火山の活動によってできた大型の円形くぼ地をいう。 「鍋、大鍋」あるいは「釜、大釜」という意味のスペイン語に由来し、 カルデラが初めて研究されたカナリア諸島での現地名(楯状火山の名称:ダブリエンテ・カルデラ)による。

地下からマグマが上昇する通路(火道)の地表部分のすり鉢状の地形をいうが、 本来は単に地形的な凹みを指す言葉で明瞭な定義はなく、 比較的大きな火山火口や火山地域の盆地状の地形一般を指す場合がある。 過去にカルデラが形成されたものの、 現在は侵食や埋没によって地表に明瞭凹地として地形をとどめていない場合もカルデラと呼ぶ。

カルデラの大きさは、地球上では直径約2~数十kmであるが、 月や火星や金星の表面には、もっと大きな、 径200kmを超える円形くぼ地が存在しており、 その多くは隕石が衝突してできた隕石孔(クレーター)であるが、 火山活動によって生じたものも少なくない。 それらはカルデラと呼ばれることもあるが、 隕石孔と区別せずクレーターと呼ばれることが多い。

地球上のカルデラは次の3種に大別される。
浸食カルデラ
火口が長年月の浸食作用により拡大されて生じた円形ないし馬蹄形のくぼ地(例:たとえば天城山)
爆発カルデラ
大規模な水蒸気爆発により山体の一部が崩壊して生じた馬蹄形のくぼ地(たとえば磐梯山、鳥海山)
陥没カルデラ
大規模なマグマの噴出に伴って火口周辺が陥没して生じたくぼ地

後カルデラ火山、後カルデラ火山活動

後カルデラ火山後カルデラ火山活動

カルデラができた後にも火山活動は起こり、後カルデラ火山活動と呼ばれる。
その後カルデラ火山活動の結果、 カルデラ内に新たにできた火山を後カルデラ火山と呼ぶ。

例として、 屈斜路カルデラのアトサヌプリ、中島。 阿寒カルデラの雌阿寒岳、雄阿寒岳。 阿蘇カルデラの中岳、高岳。 姶良カルデラの桜島、若尊(わかみこ)。 鬼界カルデラの硫黄岳、稲村岳、昭和硫黄島などが挙げられる。

ストロンボリ式噴火

ストロンボリ式噴火  英語:Strombolian eruption

ストロンボリ式噴火とは、 噴火形態の一つで、 間欠的で比較的穏やかな爆発を伴う噴火で、 火山礫、 火山弾が数百メートル程度の高さに達する噴火に用いられる用語である。 名前はイタリアのストロンボリ山から取られている。

ストロンボリ式噴火は、 強く爆発的でないために火道のマグマ供給システムが壊れにくく、 長期間(数ヶ月~数年)に亘って活動することが珍しくない。 この噴火が続くと円錐台の形をした火砕丘(多くの場合スコリア丘)が形成される。 マグマの組成としては玄武岩から安山岩の火山によく見られる。

この形式に属する火山はストロンボリ山以外にもパリクティン山、 エレバス山等が見られる。 日本の例では近年の西之島の西暦2013年から続く噴火が挙げられる。 阿蘇山の中央火口丘にある米塚スコリア丘も数千年前のストロンボリ式噴火で形成されたものである。

タフリング、タフコーン

タフリング(tuff ring)、タフコーン(tuff cone)

タフリングもしくはタフコーンとは、 火山の爆発的な噴火で生じた火口地形のことである。
(「タフ(凝灰岩)」は、火山灰や軽石などの火山砕屑物の降下物でできた堆積岩。)

マグマの通り道である火道が浅水域や地下水が潤沢な場所に開いた場合、 そこではマグマに熱せられて水が激しく沸騰して圧力が高まり、 マグマ水蒸気爆発という爆発的噴火が起きやすくなる。 具体的には、湖の中、沿岸域、沼、沼地などの水面、 もしくは湿地などの地下水に富んだ場所で起きやすい。

浅所でのほぼ円形の輪郭で周辺に顕著な堆積物の丘をもたないもので、 火口の直径に対して火口縁の高さがあまりないもののうち、 火口底が地下水面より高くて乾いているときにタフリングということが多い。 タフコーンはただ単にタフリングの高くなったものにすぎない。 火口底が地下水面より低く水が溜まっている場合はマールという。

テフラ

テフラ  テフラは空中を介して移動した火山砕屑物の総称であり、 熔岩に対して用いられる。

熔岩は溶岩流として火山体の斜面を流下したり、 貫入岩として火山体周辺に貫入するのでその分布は狭い範囲に限られる。 これに対し、 特に粒径の小さいテフラは風によって遠くまで運搬され、 噴火当時の地表面を被い、 堆積環境の水中などでは薄層として地層間に取り込まれる。

テフラはその形成期間が地形や地層の形成期間と比べて極めて短く、 その分布範囲が広いという特徴があり、 鍵層として地形面や地層の対比に利用されている。 また、 テフラに含まれているジルコンや黒曜石を用いて、 フィッショントラック法という年代測定法でテフラの噴出年代が求められている。 テフラの堆積状況を解読して地史を編んでいくことをテフロクロノロジーという。

十勝岳噴火1926年

西暦1926年の十勝岳噴火は、 西暦1926年5月24日に北海道の十勝岳で発生した大噴火である。 この噴火によって大正泥流と呼ばれる大規模な融雪型火山泥流が発生し、 144人の死者・行方不明者が出た。

日本の火山災害史上において大規模な泥流を伴った事例として広く知られ、 なおかつ寒冷地における積雪期の火山災害の典型例として、 火山学関連の専門書などで多数言及されている。

被害の内容

西暦1926年9月8日にも十勝岳は小噴火を起こし、 2名が行方不明となった。 その後も火山活動は続き、 一連の活動が終息を迎えたのは西暦1928年12月4日の小噴火後であった。 中央火口丘が崩壊した跡にはごく低い非対称なスコリア丘が形成され、 その火口は「大正火口」と呼ばれるようになった。 以降、十勝岳は西暦1952年までは比較的平穏な期間が続いた。

ハワイ式噴火

ハワイ式噴火  英語:Hawaiian eruption

ハワイ式噴火とは、 マグマのしぶきや溶岩が連続的に流れ出る、 非爆発的タイプの噴火である。 流出性噴火 (en:effusive eruption) とも言う。 ハワイのキラウエア火山などでよく見られるためこの名がある。 マグマのしぶきを連続的に噴水のように放出する溶岩噴泉や割れ目噴火による「火のカーテン(英: curtain of fire)」などが特徴的である。 このタイプの噴火が起こるのは、 マグマが玄武岩質で粘性が低く、 水などの揮発性成分の含有量が少なく、 温度が高い場合に多い。 ハワイ島の火山のほか、 アイスランドなどでよく見られる。

日本においても主に玄武岩質マグマを噴出する伊豆大島や三宅島などでよく見られる。 ただしハワイより火砕物の生産量は多い。 これはハワイより揮発性成分の量が多いことによる。

ハワイ式噴火は非爆発的で飛散物が遠くまで飛ばないため、 火山活動の中では安全なものと思われており、 観光スポットとしても人気がある。

しかし、 ハワイ式噴火から爆発的噴火に移行することもある。 割れ目噴火が海岸に達して海水や地下水と接触したり、 火口内を埋めたマグマが地下に逆流するときに地下水と接触したりすると、 マグマ水蒸気爆発に移行することがある。 西暦1790年、 キラウエアを行進中の兵士80名が死亡した事件や、 西暦1924年5月18日、 観光客が火口からの飛来物に当たり、 それが原因で死亡している事件は、 後者の、 西暦1983年三宅島噴火での新澪池・新鼻での噴火は前者の例である。

複成火山

複成火山(ふくせいかざん)

一つの火口あるいはごく近接した火口において、 休止期を挟んで、 噴火など複数の活動期(多輪廻)にまたがり形成された火山。 多輪廻火山ともいう。
単成火山(一輪廻火山)に対する語で、 現存する火山の多くは複成火山である。

単成火山に比べ大型で、 おおむね山頂部分に火口をもち、 ほぼ錐形の山体をなす。 代表的な火山地形としては、溶岩台地、楯状火山、成層火山、カルデラなどがあてはまる。

プリニー式噴火

プリニー式噴火 英語:Plinian eruption

プリニー式噴火とは、 火山の噴火活動の形式の一つである。 プリニアン噴火ともいう。

プリニー式噴火では柱のように立ちのぼる噴煙が何時間も続く。 大量の軽石とともに、 噴煙を上空高く噴き上げるのが特徴。

ブルカノ式噴火がパルス状の爆発であるのに対し、 プリニー式噴火は連続的に噴煙が立ち上がる。

地下のマグマ溜まりに蓄えられていたマグマが火道を伝って火口へ押し上げられる際、 圧力の減少に伴って発泡し、 膨大な量のテフラを噴出する。 これら噴石や火山灰、 火山ガスを主体として構成された噴煙柱の高さは通常でも10,000m、 時には成層圏に達し、 50,000m(成層圏界面)を越えて中間圏に達することもある。 1日から場合によれば数日、 数ヶ月の長きに渡り周囲を暗闇に包む。 やがて巨大な噴煙柱は自らの重みに耐え切れずに崩れ落ち、 火砕流となって四方八方に流れ下り、 時には周囲100kmの距離を瞬時に埋没させる。 このような巨大噴火の後には、 カルデラが形成される場合もある。

ブルカノ式噴火

ブルカノ式噴火  英語:Vulcanian eruption

ブルカノ式噴火とは、 火山の噴火活動の形式の一つである。 粘性が強い溶岩により、 火口が塞がれて内部の圧力が高まり、 爆発的な噴火になる。

プリニー式噴火が連続的に噴煙が立ち上がるのに対し、 ブルカノ式噴火はパルス状の爆発である。

ベースサージ

ベースサージ

火砕サージの一種で、 マグマ水蒸気噴火により発生する噴煙から側方に高速で広がる希薄な流れのこと。 ベースサージは火砕サージの一種であるため、 火山によっては噴火警報等で「火砕流」の中に含めて警戒を呼びかけている。

マール

マール(maar)

マールとは、 水蒸気爆発またはマグマ水蒸気爆発により形成された円形の火口で、 火山地形の1つである。

水が豊富にある場所でマグマ水蒸気爆発が起こって火砕サージを発生し、 爆発によって生じた円形の火口の周囲に、 少量の火砕サージ堆積物からなる低い環状の丘を形成する。 火口底が地下水面より低い場合は、 中に水が溜まることが多い。 その場合、 火口は湖となり、 沿岸部では湾入する。 通常は1回だけの噴火で形成され(単成火山)、 この点で成層火山頂上の火口(湖)とは異なる。

「マール」は、 もともとドイツ西部のアイフェル地方の方言で「湖」を意味する。 アイフェル地方にはこのようにして生じた湖沼が70か所以上に点在していて、 俗に「アイフェルの目」とも呼ばれる。 19世紀からドイツの地理学者によってこの種の地形を表す語として用いられるようになり、 その後、国際的に定着した。

サージ(surge)

うねり。波動。高まり。