離陸から10時間後、
006便は通常の巡航高度
41,000フィートを航行していた。
この時点でサンフランシスコの北西部まで
300海里の太平洋上を飛行していた。
飛行していた空域は雲が立ちこめ、
乱気流により
対気速度が絶えず変化していた(なお、この高度では許容される最大速度と最小速度の差はわずか
30ノットであり、
もし最大速度を超過すると機体が損傷する危険があり、
最小速度を割ると失速する危険があった)。
当時は自動操縦装置により
マッハ0.85で巡航するようにセットされていたが、
途中、第4エンジンの出力低下が発生した。
まもなくエンジンはフレームアウト(停止)し、
これによりエンジンの推力バランスが崩れ、右に傾きだした。
なおも自動操縦で飛行を続けたが、
機体の傾斜が大きくなったため手動操縦で修正しようと自動操縦を解除した。
この際、
速度が
マッハ0.75までに減速していたことに気づいていなかったため、
直後に機体が失速し、きりもみ状になって垂直降下した。
006便は毎分
15,000フィートの猛烈な降下率で落下した。
急降下により機体は最大5Gの負荷にさらされ、
空中で転覆したかのような姿勢となった。
水平安定板が損傷し、
尾部からAPUも脱落するなど空中分解する寸前のダメージを受けていた。
さらにエンジンへの空気流量が減少したことにより3つのエンジンの出力が低下したことで姿勢の回復が困難となった。
しかし
11,000フィートにあった雲層を突破した時に扉が空中で飛散したため着陸装置が降りて、
その空気抵抗によって機体を減速させる効果をえられた。
また006便の機長が元軍用機パイロットであったため、
この5Gの負荷の中で操縦できたことも幸いであった。
さらに雲を抜けたことで海面を視認でき、
急降下で失われていた操縦乗務員の視覚感覚を取り戻すことが出来た。
そのため006便は
9,600フィートで水平飛行に回復することが出来た。
結局2分半で
30,000フィートも降下しており、
あと40秒で海面に激突するところであった。
006便は、最寄のサンフランシスコ国際空港へ緊急着陸を要請し、
途中
27,000フィートまで上昇したが、
その後は異変が発生することなくおよそ1時間後に着陸した。
この事故では機体に大きな損傷があったほか、
重傷2名、軽傷50名を出したが、墜落寸前の事故から奇跡的に全員が生還した。
一連の急降下のきっかけとなった第4エンジンの推力低下は航空機関士の排気バルブの設定ミスが原因であった。
また、操縦士らはエンジン停止による機体の傾きは自動操縦によって修正されると考えていたが、
自動操縦装置は
エルロンと
昇降舵のみを制御し、
方向舵の制御は行わないため傾きを修正できなかった。
補助翼だけでは機体の傾きを抑えることはできず、
どんどん傾斜していくとともに
昇降舵は高度を維持しようとしていたためどんどん
対気速度が落ちていった。
この間、操縦士らは第4エンジンの推力低下の原因特定に注力していたため、
機体の傾斜と速度低下に気づいていなかった。
傾斜を修正しようと自動操縦を解除した結果、
それまで
補助翼と
昇降舵で維持されていた姿勢制御が解除されたため急激に右に傾き、
失速状態に陥り急降下した。
さらに雲中で水平線を確認できなかったこと、
それにより
空間識失調に陥ったこと、
異常な傾斜を
人工水平儀の故障と誤認したことが重なり、
姿勢の回復に時間がかかった。
また、操縦士らが長時間の操縦で過労気味であったことが判断を遅らせた要因であったとされた。