世界貿易機関(World Trade Organization) 略称:WTO
世界貿易機関とは、
自由貿易促進を主たる目的として創設された国際機関である。
常設事務局はスイスのジュネーヴに置かれている。
世界貿易機関の略称はWTOであるが、
ワルシャワ条約機構の略称も同じくWTOであった(Warsaw Treaty Organization)(ワルシャワ条約機構は
西暦1991年に解散)。
また、世界観光機関(World Tourism Organization。日本を含む157国が加盟)も略称をWTOとしていた。
そのため、ウルグアイラウンド交渉においてサービス貿易(観光が含まれる)についても扱うことになったため、
世界観光機関との混同をさけるために、
多角的貿易機構(Multilateral Trade Organization)と呼ばれていた。
しかし交渉が実質的合意がされた
西暦1993年12月15日に米国の要求によりその名称を世界貿易機関(World Trade Organization)とすることになった。
世界観光機関との混同のおそれについては、
サービス分野の観光関連については、
WTOの略称の使用を避ける等により問題が生じないとされた。
なお、世界貿易機関が他の組織に対して区別する必要があるときはWTO-OMCと表記することとされ(OMCは世界貿易機関のフランス語表記「L'Organisation mondiale du commerce」の略称)、
また一方世界貿易機関との混同を避けるため、
ワルシャワ条約機構の場合は専らWPO(「Treaty:条約」を「Pact:協定」に置換え)という略称が使用された。
また、
世界観光機関も
西暦2003年に国際連合 (UN) の専門機関となった後はUNWTOという略称を使用している。
GATT(ガット)ウルグアイ・ラウンドにおける合意によって、
世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(WTO設立協定)に基づいて
西暦1995年1月1日にGATTを発展解消させて成立した。
本来GATTは、第二次世界大戦後の安定を見据え、
国際通貨基金および国際復興開発銀行とともに設立が予定されていた国際貿易機関(ITO)の設立準備の際に、
暫定協定として結ばれたものであった。
国際貿易機関の設立が廃案となり、
GATTがその代替として発展強化されていくうちに、
再びこの分野の常設機関が求められ、
WTOが設立されることとなった。
発展解消であるため、
GATTの事務局及び事務局長もWTOへと引き継がれることとなった。
WTOはGATTを継承したものであるが、GATTが協定(Agreement)の締約国団(CONTRACTING PARTIES)に留まったのに対し、WTOは機関(Organization)であるのが根本的な違いである。
- 自由(関税の低減、数量制限の原則禁止)
- 無差別(最恵国待遇、内国民待遇)
- 多角的通商体制
を基本原則としている。
また、物品貿易だけでなく金融、情報通信、知的財産権やサービス貿易も含めた包括的な国際通商ルールを協議する場である。
紛争処理手続きにおいて、
- パネルの設置
- パネル報告及び上級委員会の報告の採択
- 対抗措置の承認
については、
全加盟国による反対がなければ提案されたものが、
採択されるというネガティブ・コンセンサス方式(逆コンセンサス方式)を採用した強力な紛争処理能力を持つ。
これは国際組織としては稀な例であり、
コンセンサス方式を採っていたGATTとの大きな違いで、
WTOの特徴の一つといえる。
西暦1999年のシアトル閣僚会議で新ラウンドの立ち上げを目指すも開発途上国や反グローバリズムを掲げる市民団体の反発で失敗し、
西暦2001年11月にカタールのドーハで行われた第4回WTO閣僚会議でようやく新多角的貿易交渉(新ラウンド)の開始を決定し、
ドーハ・ラウンドと呼ばれた。
西暦2002年2月1日の貿易交渉委員会で新ラウンドがスタートした。
しかし9年に及ぶ交渉は先進国と、
急速に台頭してきたBRICSなど新興国との対立によって中断と再開を繰り返した末、
ジュネーブで行われた第8回WTO閣僚会議(
西暦2011年12月17日)で「交渉を継続していくことを確認するものの、近い将来の妥結を断念する」(議長総括)となり事実上停止状態になり、
部分合意等の可能な成果を積み上げる「新たなアプローチ」の採用が合意[5]された。
その後、
西暦2013年のインドネシア・バリ島における第9回閣僚会議で、
貿易円滑化協定を含む、
貿易円滑化・農業・開発の3分野からなる「バリ合意」が成立し、
西暦2014年7月まで貿易円滑化協定をWTO協定に加える(附属書1Aに追加)するための文書を一般理事会で採択すべきとされた。
しかしインドが、合意を蒸し返す状態で反対したため、
期限までに採択できなかった。
その後、食糧備蓄への補助金の問題で先進国側が譲歩することで、
ようやくインドが合意し、
西暦2014年11月27日の一般理事会で、
貿易円滑化協定が採択された。
WTO加盟国の3分の2が改正を受諾した日に発効することになっており、
西暦2017年2月22日にこの要件を満たし、協定が発効した。