ヘーラーはオリュンポス十二神の一柱であるとともに、
「神々の女王」でもあった。
威厳のある天界の女王として絶大な権力を握り、
権威を象徴する王冠と王笏を持っている。
虹の女神イーリスと季節の女神ホーラーたちは、
ヘーラーの腹心の使者や侍女の役目を務めた。
また、
アルゴス、スピンクス、ヒュドラー、ピュートーン、ラードーン、
カルキノス、大サソリなどの怪物を使役する場面もある。
世界の西の果てにある不死のリンゴの園・ヘスペリデスの園を支配していた。
結婚・産児・主婦を守護する女神であり、
古代ギリシャでは一夫一婦制が重視されていた。
嫉妬深い性格であり、
ゼウスの浮気相手やその間の子供に苛烈な罰を科しては様々な悲劇を引き起こした。
夫婦仲も良いとは言えず、
ゼウスとよく口論になっている。
また、多くの神々や英雄たちの物語がヘーラーの敵意を軸にして展開することも多く見られる。
毎年春になるとナウプリアのカナートスの聖なる泉で沐浴して苛立ちを全て洗い流し、
処女性を取り戻し、
アプロディーテーにも劣らず天界で最も美しくなる。
この時期にはゼウスも他の女に目もくれずにヘーラーと愛し合うという。
聖鳥は孔雀、郭公、鶴で聖獣は牝牛。
その象徴は百合、柘榴、林檎、松明である。
ローマ神話においてはユーノー(ジュノー)と同一視された。
このヘーラーの名が「英雄」(ヘーロース)の語源となっているという推測は、
アウグスティヌスやセビーリャのイシドルスの著書に記されている。
ヘーラーはサモス島で誕生したと考えられており、
サモス島は古くからヘーラー信仰の中心地となっていた。
また一説にサモス島におけるゼウスとヘーラーの結婚式の夜は三百年の間続いたという。
元来は、アルゴス、ミュケーナイ、スパルタ等のペロポネーソス半島一帯に確固たる宗教的基盤を持っており、
かつてアカイア人に信仰された地母神であったとされ、
北方からの征服者との和合をゼウスとの結婚で象徴させたと考えられる。
二神の不和は、
両者の崇拝者が敵対関係にあったことの名残とも考えられている。
アルゴスの神殿にあるヘーラー像はカッコウのとまった玉杖と柘榴を持っていた。