事故発生日:
西暦1966年3月5日
便名:英国海外航空 (BOAC) 911便(機体記号:G-APFE)
機種:ボーイング 707-436
死者:乗員11人乗客113人、合計124人全員が死亡
状況:
英国海外航空機空中分解事故は、
乗員11名・乗客113名の合計124名(日本人13名を含む)を乗せた、ボーイング707型機が富士山付近の上空で乱気流に巻き込まれ、
空中分解して墜落するという航空事故である。
羽田空港を離陸し巡航高度に上昇中の14時15分ごろ、
静岡県御殿場市付近上空
15,000フィート (4,600 m)を飛行中、
乱気流に遭遇して右翼が分断されるなどして機体は空中分解し、
御殿場市の富士山麓・太郎坊付近に落下した。
空中分解してから墜落するまでの様子を目撃していた自衛隊員などによると、
空中分解した後に両翼から白いジェット燃料を吹き出しながら機体中心部が地面に衝突し、
爆発音とともに黒煙が上がったという。
その後操縦席を含む機首部分が焼失した。
機首付近は本来燃料タンクが無いため炎上しないはずだったが、
911便は乱気流遭遇時に主翼付近のタンク隔壁を燃料が突き破って機首付近に溜まっていたことが火災の原因となった。
翌朝になっても機首を含めた機体の一部はまだ燃え続けており、
ジェット燃料の白い煙と臭いが絶えない状況であった。
...
墜落の瞬間は、
富士山測候所職員や陸上自衛隊東富士演習場の自衛隊員・路線バスの運転手・箱根へ社員旅行に来ていた旅行者など複数の目撃者がおり、
その多くが静岡県警察に通報したことや住宅地・自衛隊の駐屯地から余り遠くなかったことから、
早いタイミングで警察官や消防隊員が墜落現場に駆け付けて捜索にあたった。
当初墜落したのは小型機であるとの情報が寄せられたほか、
白い煙と部品を撒き散らしながら墜落するのをパラシュートで乗員が脱出したものと勘違いして「自衛隊機が墜落した」という誤報も伝えられたが、
墜落現場に駆け付けた警察官や消防隊員・自衛官らが「BOAC」・「Boeing 707」と書かれた機体の残骸を発見し、
英国海外航空のボーイング707型機が墜落したことを確認した。
前述の自衛隊員が事故機の墜落時刻に前後して、
この日に平和台野球場(福岡市)で行われたプロ野球オープン戦の西鉄ライオンズ対読売ジャイアンツの試合のラジオ中継(NHKラジオ第1放送)を偶然聴いていたとされ、
その自衛隊員の「(1回表の)巨人の攻撃で長嶋(茂雄)・森(昌彦、現・祇晶)が出て(6番打者の)吉田(勝豊)の打席の時に、飛行機の主翼の両端辺りから白く尾を引き始めました」という証言を元に、
本件事故の捜査本部がNHKの当該試合中継の録音テープを分析した結果、
正確な墜落時刻が判明した。
富士山測候所の『カンテラ日誌』には「14時15分、南東方の上空500メートルくらいのところに上昇姿勢で右翼の3分の2を残し、
火と煙を噴いて落ちる飛行機を発見」と記録された。
これらの目撃証言に加えて、
乗客の1人が持っていた8ミリカメラ(アメリカ・キイストン社製)が回収され、
この記録内容が事故原因究明に大きく寄与した。
事故機に搭載されていた
フライトデータレコーダー(FDR)は発見から間もなく回収されたが、
墜落時の火災で破壊されており分析調査は断念せざるを得なかった。
しかし墜落までの光景については、
前述のように自衛隊員をはじめ多くの目撃者がおり、
さらに富士スピードウェイで行われていた自動車レースを取材中の平凡パンチのカメラマン・社員旅行の男性によって空中分解して墜落する機体の写真も撮影されていた。
社員旅行で箱根・駒ケ岳山頂に登ったこの男性は、
新調したばかりの200ミリ望遠レンズで「飛行機雲のようなものを引いて富士に向かって飛ぶ飛行機」を撮ったつもりが、
実際には墜落の瞬間だった。
この写真を含めた記事は朝日新聞の東京本社版に7段抜き・大阪本社版には9段抜きで掲載され、
更にAP経由で世界中に配信された。