事故発生日:
西暦1937年5月6日
便名:ドイツ飛行船運輸 (DELAG) ヒンデンブルク号
機種:ツェッペリン LZ 129(硬式飛行船)
死者:乗員61人乗客36人、合計97人の内35人と地上の1人が死亡
状況:ヒンデンブルク号爆発事故は、
1937年5月6日にアメリカ合衆国ニュージャージー州マンチェスター・タウンシップにあるレイクハースト海軍飛行場で発生した、
ドイツの硬式飛行船・LZ129 ヒンデンブルク号の爆発・炎上事故を指す。
この事故で、乗員乗客35人と地上作業員1名、合計36名が死亡し多くの乗客が重傷を負った。
映画、写真、ラジオなどの各メディアで広く報道されたことで、
大型硬式飛行船の安全性に疑問が持たれ、
飛行船時代が幕を閉じる契機となった。
1912年4月14日に起きたイギリスの豪華客船タイタニック号沈没事故、
1986年1月28日に起きたアメリカのスペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故などとともに、
20世紀の世界を揺るがせた大事故の一つとして知られている。
...
ヒンデンブルク号は、マックス・プルス船長の指揮の下、
定期運航でフランクフルトを発ち(現地時間1937年5月3日20時20分、アメリカ東部時間5月3日14時20分、日本時間5月4日4時20分)、
2日半かけて大西洋を横断したが、
向かい風の中を飛行したため予定より8時間遅れていた。
しかも雷雨の影響により、
着陸はさらに遅れることとなった。
予定より12時間遅れとなった現地時間(アメリカ東部時間)5月6日19時25分(日本時間5月7日8時25分、ベルリン・フランクフルト時間5月7日1時25分)頃、
ニュージャージー州マンチェスター・タウンシップのレイクハースト海軍航空基地着陸の際に、
尾翼付近から突如爆発。
炎は瞬く間に船体を焼き尽くし、
ヒンデンブルク号は爆発から僅か32秒(34秒、37秒とも)で墜落、
乗員・乗客97人中35人と地上の作業員1名が死亡した。
このときの様子は写真・映像およびラジオ中継により記録され、
現在も事故直後の様子を知ることができる。
また、映像技術の発展に伴い、
モノクロ映像だったヒンデンブルク号の映像を処理してカラー化されたものも出ている。
事故発生当時は水素ガス引火による爆発事故ということで、
浮揚ガスに水素ガスを用いるのは危険だとする説が流布された。
着陸直前に船尾が下がった状態であったことから、
爆発が起きた船尾で水素漏れが起きていたという説もある。
ツェッペリン社は原因については一切公表しなかったが、
濡らした外皮に電流を流して発火させる実験を行い、
外皮が事故の原因であるとの結論に達していた。
この事実をツェッペリン社が公表しなかったのは、
保険金の問題もしくは国家社会主義ドイツ労働者党 (ナチス) の圧力が原因であると考えられている。
その後、ツェッペリン社は外皮塗料を改良した新型機を製造したが、
アドルフ・ヒトラーの指示により解体された。
その後、1997年にNASA・ケネディ宇宙センターの元水素計画マネジャー、アディソン・ベインが当時の証言、
映像分析、そして実物の外皮の分析により、
事故の原因はヒンデンブルク号の船体外皮の酸化鉄・アルミニウム混合塗料(テルミットと同じ成分である)であると発表した。
彼の説は
ヒンデンブルク号の着陸の際、飛行中に蓄積された静電気を逃がすためのロープが下ろされた瞬間に、外皮と鉄骨の間の繋ぎ方に問題があったために十分に電気が逃げず、電位差が生じて右舷側尾翼の前方付け根付近で放電が起こったことから外皮が発火・炎上した。
というもので、
現在ではこの説が有力になりつつある(この場合、浮揚ガスが水素でなくヘリウムの場合でも飛行船の外皮は炎上する。ただし、水素と違ってヘリウムは爆発はしない)。
以上の説は、1999年にイギリスのトゥエンティ・トゥエンティ制作のテレビ番組 "Secrets of the Dead, What Happened to the Hindenburg?" でベイン自身の解説とともに取り上げられ、
日本でも翌2000年6月16日にNHK総合で「ドキュメント 地球時間 ヒンデンブルク号 豪華飛行船の悲劇」として放送された。
また、「ドイツ政府の工作員による自爆テロだったのではないか」という陰謀説もある。
当時、「大型固定翼機の実用化を進めていたドイツにとって、『飛行船はもはや時代遅れ』という見方が強まっており、
大衆の目前で飛行船の危険性を印象づけることで航空機への転用を図ろうとした」という理由であるが、
この説には証拠となる証言や物的証拠は一切存在せず、
また体面を非常に気にしていたナチス政権が大事故で全世界に醜態をさらすことを許すのかという点で無理があり、
ツェッペリン飛行船製造会社とナチスは仲が悪かったという状況証拠のみを根拠としている。
また、ナチスを嫌うツェッペリン社社長エッケナー博士による破壊工作という説もあるが、
これも製造会社とNSDAPの不仲という状況以外に根拠はない。