小窓
小窓集(陶磁器)

作成日:2023/12/14

よみがな順で記載する。

錫釉(すずゆう、すずぐすり)

錫釉(すずゆう、すずぐすり)  英語: Tin-glazing

錫釉は、一般的に赤味や淡黄褐色がかった土器に対し、 白味や光沢、不透明さを与えるために使用される釉薬の一種である。 主に錫釉陶器に用いられる。 また鉛釉に少量の酸化スズを添加させた釉薬である。 錫釉はその不透明な白色であることから、 錫釉の上に絵付などで装飾が行われる。 17世紀までは釉薬の上に色をなじませるために1度だけ焼成する工程であったが、 17世紀以降は上絵付でガラス質化を施すために2度軽く焼成することで色彩の幅を広げることに成功した。 錫釉陶器はマヨリカ焼、マジョリカ焼、デルフト焼、ファイアンス焼きが一般的に知られている。

錫釉は鉛釉の代替として使用されることもあり、 釉薬として別々に使用される場合がほとんどであるが、 陶磁器の種類によっては両方が使用されることもある。 錫釉が鉛釉の代替として使用される場面は、 鉛釉だけで絵付を行った場合、 焼成する際に釉薬の付着が不安定で均一性が見られなかったり、 釉薬の上に絵付した色が上手く着色できなかったりするので、 錫釉が用いられている。

近東で発明された錫釉による技法は、 中世後期にヨーロッパに伝来し、 イタリア・ルネサンス期で盛んに製造されたマヨリカ焼に多く用いられてきた。 東アジアにおいて歴史的に錫釉が陶磁器の釉薬として使用されていなかった。 二酸化スズは現在でも乳化剤や白色の顔料に用いる釉薬として使用されている。 酸化スズは長い間、 不透明な白色や光沢を出すための釉薬として使用されてきた。 乳化剤用途以外にも、 酸化スズは顔料や釉薬の色安定剤として使用されている。 また、電線に用いる碍子用の磁器の一部に釉薬として少量用いられている。

テラコッタ

テラコッタ(terra cotta)とは、 イタリア語の「焼いた(cotta) 土(terra)」に由来する言葉。 以下のような意味をもつ。
陶器や建築用素材などに使われる素焼きの焼き物。
素焼きで仕上げる彫刻を指す。 メソポタミア、古代ギリシャ、エトルリアにおいてみられ、 いったん衰退したがルネサンス期にイタリアやドイツを中心に復興され、 現在は各地域で制作されている。 古代ギリシャのタナグラ人形、中国の俑、 日本における縄文時代の土偶、古墳時代の埴輪もまた、 製法としてはテラコッタである。
上記に用いられる粘土のこと。
テラコッタは焼成温度によって出来上がりの色彩が変化する。 800度程度で焼成されたものがよく見られる。 レンガや屋根板と同様、彫刻や陶器に使われてきた長い歴史がある。 古代においては、彫刻をこしらえたあと、天日干しにしていた。 その後、火おけの灰の中に入れて焼き固めるようになった。 最終的には今日見られるのと同様に窯に入れて焼くようになった。 紀元前210年から209年にかけて建設された始皇帝の兵馬俑にもテラコッタが使われている。
上記から転じて、そのような色のこと。通常、茶色がかったオレンジ色である。
JISの色彩規格では「くすんだ黄みの赤」としている。 近似色としては煉瓦色があり、 それよりは色より薄く淡いイメージである。

陶磁器

陶磁器(とうじき、英語: pottery and porcelain)は、 粘土・長石・ケイ石などを主原料にした焼き物の総称。セラミックの一種。 ただし、「陶磁器」は日本で使われている用語である。 陶磁器を含めたセラミックの分類については研究者によって議論があり、 窯業用語も国によって異なっている。

陶磁器に使われる粘土には、 加熱することでアルミニウムやカルシウムなど他の物質と化合しガラス化する珪酸を主成分とする石英などが含まれている。 粘土を成形した後に、 加熱する(熱を加える)ことで溶けて流体となったガラスが土粒子の間に入り込み、 その後、冷めるとそのガラスが固体化し土粒子同士をくっつける。 『古陶磁の科学』の著者・内藤匡は、 この過程をおこしに喩(たと)えている。 おおまかに言えば、 陶器と磁器の違いはこのガラスになる成分と量の違いである。

陶磁器は質感に優れており衛生的で一定の耐久性もあることから、 食器、花器、植木鉢、装飾品、衛生陶器、タイルなどに利用されている。

もう少し詳しく説明すると、 陶磁器は陶器など多孔質の素地(微細な穴が多く空いている性質)で吸水性のあるものと、 炻器(せっき)や磁器などの素地で吸水性が低いものに分けられる。

多孔質の素地の製品の用途としては食器、タイル、植木鉢などがある。 また、緻密質の素地の製品には食器、タイル、装飾品、衛生陶器、工業用及び電気用磁器、歯科用磁器などがある。

ファイアンス焼き

ファイアンス焼き(ファイアンスやき、faience)とは、 繊細な淡黄色の土の上に錫釉をかけた陶磁器を指す。

北イタリアのファエンツァが名称の由来である。 酸化スズを添加することで絵付けに適した白い釉薬が考案され、 陶芸は大きく発展することになった。 この発明はイランまたは中東のどこかで9世紀より以前になされたと見られている。 錫釉陶器を焼くには1000℃以上の温度となる窯が必要である。

技術的には錫釉陶器であっても例えば16世紀フランスのサン・ポルシエール(焼き)はファイアンス焼きではない。 しかし、一般にはあまり厳密に区別することはない。

釉薬(ゆうやく)

釉薬(ゆうやく、うわぐすり、釉、上薬)  英語: glaze

釉薬は、陶磁器や琺瑯の表面をおおっているガラス質の部分である。
陶磁器などを製作する際、粘土などを成形した器の表面に薬品をかけて生成する。
粘土や灰などを水に懸濁させた液体が用いられる。