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マグニチュード

作成日:2022/3/4

マグニチュード

地震のマグニチュード(英: Seismic magnitude scales)とは、 地震が発するエネルギーの大きさを対数で表した指標値である。 揺れの大きさを表す震度とは異なる。 日本の地震学者和達清夫の最大震度と震央までの距離を書き込んだ地図に着想を得て、 アメリカの地震学者チャールズ・リヒターが考案した。

この最初に考案されたマグニチュードはローカル・マグニチュード (ML) と呼ばれており、 リヒターの名からリヒター・スケール (Richter scale) とも呼称される。

マグニチュードは地震のエネルギーを1000の平方根を底とした対数で表した数値で、 マグニチュードが 1 増えると地震のエネルギーは約31.6倍になり、 マグニチュードが 2 増えると地震のエネルギーは1000倍になる。

地震学ではモーメント・マグニチュード (Mw) が広く使われている。 日本では気象庁マグニチュード (Mj) が広く使われるが、 長周期の波が観測できるような規模の地震(Mj 5.0以上)ではモーメント・マグニチュードも解析・公表されている。 ...
一般的にマグニチュードは
M = log10 A + B (Δ , h )
の形の式で表される。
ここで、Aはある観測点の振幅、Bは震央距離Δや震源の深さhによる補正項である。

地震が発するエネルギーの大きさを E(単位:ジュール)、 マグニチュードを M とすると、次の関係がある。
log10 E = 4.8 + 1.5 M

この式からマグニチュード M が 1 大きくなると左辺の log10 E が 1.5 増加するからエネルギーは約32倍大きくなる (101.5 = 10√10 ≒ 31.62)。同様にマグニチュードが 2 大きくなるとエネルギーは1000倍になる (101.5×2 = 103 = 1000)。また、マグニチュードで0.2の差はエネルギーでは約2倍の差になる (101.5×0.2 = 100.3 ≒ 1.995)。

ローカル・マグニチュード(ML

ローカル・マグニチュード(英: Local magnitude scale, ML

ローカル・マグニチュードは、 アメリカの地震学者チャールズ・リヒターが考案した地震のエネルギー量を表す指標値(マグニチュード)である。 リヒター・マグニチュード(英: Richter magnitude scale)あるいはリヒター・スケール(英: Richter scale)とも呼称される。

西暦1935年、 チャールズ・リヒターは地震の規模を計測地点に依らず同じ値で表す指標値である「マグニチュード・スケール」(英: Magnitude scale)を発表した(後に改訂し、ローカル・マグニチュードやリヒター・マグニチュードと呼ばれるようになる)。 ただし、ローカル・マグニチュードは特定の状況・地震計に依存しており、 その条件下で小さな規模の地震でしか正しい計測ができない問題があった。 それらの問題を解決するため、 ローカル・マグニチュードを改善した実体波マグニチュード、 表面波マグニチュード、モーメント・マグニチュードなどが開発され、 西暦1935年代のマグニチュードの計測法では主にモーメント・マグニチュードが利用されている。 全ての種類のマグニチュード計測法は、 オリジナルのローカル・マグニチュードの対数特性を保持しており、 ほぼ同等の値を示すよう定義されている。

ローカル・マグニチュードの値の増加は測定された振幅の10倍の増加を表す。 エネルギーに関しては、 ローカル・マグニチュードの値の増加は放出されるエネルギー量の約31.6倍の増加に対応し、 0.2の増加は放出されるエネルギーの2倍の増加に対応する。 マグニチュードが4.5より大きい地震は、 計測器が地震のシャドーゾーンに位置していない限り、 世界中の全ての計測器によって記録されるほど強力である。

モーメント・マグニチュード(Mw

モーメント・マグニチュード (英: Moment magnitude scale, Mw)
wはwork(仕事)の頭文字を意味する。

モーメント・マグニチュードは、 中規模以上の地震においてエネルギー量を表す指標値(マグニチュード)である。 モーメント・マグニチュードで計測した指標値はマグニチュード(記号:M)で示されているが、 他のマグニチュード計測法の指標値と区別するため、 モーメント・マグニチュード(記号:Mw)と明示されることが多い。

モーメント・マグニチュード西暦1935年代に定義されたローカル・マグニチュード(リヒター・スケール)の計測値を基準にして開発されている。 コンセプトと計算式は異なるが、 同規模の地震のマグニチュードを計測した場合、 いずれもほぼ同等の計測値が得られるよう設計されている。 適切な条件の基では、ローカル・マグニチュードと同様に、 モーメント・マグニチュードは対数スケールの特性に従って、 値の増加は放出されるエネルギー量の約32倍の増加に対応する。 これによりモーメント・マグニチュード7の地震は、 マグニチュード6の約32倍、マグニチュード5のちょうど1,000倍のエネルギーを放出する。 ここで、マグニチュードが2あがると約1000倍、 と示す人がいるが、マグニチュードが1上がる場合の約32倍というのは√1000倍のことなので、 マグニチュードが2あがるとちょうど1000倍になるのである。

モーメント・マグニチュードは断層面の剛性率・断層面積の合計・断層全体の変位量の平均の積である地震モーメントから算出される。 地震モーメントが弱い地震では正しく計測できないため、 モーメント・マグニチュードはマグニチュード3以下の弱い地震では適切なマグニチュード値を計測することができない。

気象庁マグニチュード(Mj

気象庁マグニチュード (MjMjma)

気象庁マグニチュードは、 日本の気象庁の定める地震のエネルギー量を表す指標値(マグニチュード)である。

気象庁の公式報告として利用され、 日本で単に「マグニチュード(M)」と報告された値は一般的に気象庁マグニチュードの値である。 モーメント・マグニチュードともよく一致している。

マグニチュードには国際標準の規格がなく、 気象庁マグニチュードは日本固有の指標値であるが、 他国で用いられている指標値とおおよそ同じ値をとる。 ただし、M8を越える巨大地震では過小測定するため、 気象庁の公式報告でも気象庁マグニチュードと併行してモーメント・マグニチュードも利用される。

なお、気象庁の地震に関する指標値(震度)には気象庁震度階級もある。

気象庁マグニチュードは、 西暦1920年代まで遡って気象庁の報告・記録する地震のエネルギー量を表す指標値として利用されている。 西暦1970年代後半、 地面が動く速度を観測可能な高感度地震計を整備してから、 規模の小さな地震では地面の動く速度からマグニチュードを測定する速度マグニチュードを導入した。 整備直後は速度マグニチュードを計測する実験式を定めるための蓄積情報が十分に集まっていかなかったため、 速度マグニチュードで測定した気象庁マグニチュードの精度は低かった。 西暦2000年代初頭に、 速度マグニチュードのための蓄積情報が集まったこと、 速度マグニチュードと変位マグニチュードの計測法を切り替える閾値周辺に誤差があること、 変位マグニチュードと他国で利用されているモーメント・マグニチュードに差異があることから、 気象庁マグニチュードの値の見直しが実施された。 西暦2001年4月23日に一部の地震の気象庁マグニチュードが更新され、 西暦2003年9月25日に気象庁マグニチュードを計測する実験式・経験式の改定が行われた。

表面波マグニチュード(Ms

表面波マグニチュード(英: Surface wave magnitude, Ms

表面波マグニチュードは、 表面波から計測する地震のエネルギー量を表す指標値(マグニチュード)である。

西暦1946年に、 ベノー・グーテンベルグは、 ローカル・マグニチュード(リヒター・スケール)を基礎にして、 表面波の振幅・周期と震央距離(角度)からマグニチュードを計測する表面波マグニチュードの原型を定義した。 その後、 西暦1962年にヴィット・カールニクは、 汎用化した表面波マグニチュードの評価式を定義し、 西暦1967年にIASPEIはマグニチュードの標準的な計測法として推奨した。

表面波マグニチュードローカル・マグニチュードの特性・評価値を踏襲しており、 表面波マグニチュードローカル・マグニチュードはほぼ同等のマグニチュード値を計測する。