世界文化遺産 / 文化遺産

ユネスコが登録する世界遺産は、 その特質に応じて「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産」に分類されている。
ここではそのうちの「文化遺産」について扱う。
西暦2021年の第44回世界遺産委員会拡大会合終了時点では、 文化遺産は897件登録されている。

世界遺産条約では、文化遺産は次の3つのいずれかに分類されている。(詳細な説明は後述
記念物(monument)
世界遺産条約第1条では「建築物、記念的意義を有する彫刻及び絵画、考古学的な性質の物件及び構造物、金石文、洞穴住居並びにこれらの物件の組合せであって歴史上、芸術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの」と定義されている。
建造物群(group of buildings)
世界遺産条約第1条では「独立し又は連続した建造物の群であって、その建築様式、均質性又は景観内の位置のために、歴史上、芸術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの」と定義されている。
遺跡(site)
世界遺産条約第1条では「人工の所産(自然と結合したものを含む。)及び考古学的遺跡を含む区域であって、歴史上、芸術上、民俗学上又は人類学上顕著な普遍的価値を有するもの」と定義されている。
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分類

記念物 (monument)
記念物は、 世界遺産条約第1条では
建築物、記念的意義を有する彫刻及び絵画、 考古学的な性質の物件及び構造物、 金石文、洞穴住居並びにこれらの物件の組合せであって歴史上、 芸術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの

と定義されている。

具体的には、ケルン大聖堂(ドイツ)のように単独の建造物が登録される物件は、これに分類されるのが普通である。
建造物群 (group of buildings)
世界遺産条約第1条では
独立し又は連続した建造物の群であって、 その建築様式、均質性又は景観内の位置のために、 歴史上、芸術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの

と定義されている。

具体的には、 ポルト歴史地区(ポルトガル)のように町並みなどが登録される場合には、 これが適用される。
また、 ベルギーとフランスの鐘楼群のようにまとまった景観を形成していなくても、 「建造物群」としてカテゴライズされるものがある。
遺跡 (site)

世界遺産条約第1条では
人工の所産(自然と結合したものを含む)及び考古学的遺跡を含む区域であって、 歴史上、芸術上、民俗学上又は人類学上顕著な普遍的価値を有するもの

と定義されている。

このカテゴリーにはクンタ・キンテ島と関連遺跡群(ガンビア)やキルワ・キシワニとソンゴ・ムナラの遺跡群(タンザニア)などの考古遺跡だけでなく、 フィリピン・コルディリェーラの棚田群のように現存する農業文化の継承地域なども含まれる。 つまり、考古遺跡よりも指し示す範囲が広いカテゴリーであり、 自然遺産の登録地にもsiteが使われることもあって、 「遺跡」という訳語を避け、 「場所」と訳している専門家もいる。

西暦1992年に「世界遺産条約履行のための作業指針」に「文化的景観」の概念が盛り込まれたが、 これは上記3分類の「遺跡」に規定された自然と結合した人工の所産に含まれる。